読書感想:スパイ教室09  《我楽多》のアネット

 

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読書感想:スパイ教室 短編集03 ハネムーン・レイカー - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、先に逝ってしまった「鳳」達の遺志を継ぎ、フェンド連邦に巣食っていた黒幕との激闘を終えたクラウス達、「灯」の面々であるが。前巻の最後、師匠の遺した情報から第二次世界大戦が迫っている、という衝撃的な事実が明かされたのはシリーズを読まれている読者様もご存じであろう。故に、長い休暇というものは彼等には許されない。新シーズンの幕開け、その始まりを描いていくのが今巻なのである。

 

 

「―――座して待つわけにはいかない」

 

ゲルダが遺した資料から判明した事実。それは世界恐慌と呼ぶにふさわしい金融危機が何れ起こり、第二次世界大戦が何れ勃発する、その備えとなる「暁闇計画」は、「焔」のメンバーも一時期活動していたライラット王国から提言されたというもの。だが、かの国には「常勝無敗の謀神」との異名を持つ「ニケ」という名のスパイがいる。故、クラウスを失う訳にもいかず足踏みをし。そんな中、流石に休まねばならぬために「灯」の面々はマルニョース島と呼ばれる観光地で二週間のバカンスに移る。

 

 だが、バカンスの始まる前、クラウスは急に条件を出す。一日目、十三日目、十四日目以外は全員集合してはならぬと。訳も分からぬもその意思に従い、十四日目。何故かアネットの姿が見えず。彼女を探しそれぞれの足跡をたどる中、十四日の間に起きていた幾つもの事件が繋がっていく。

 

クラウスの知己の相手である、彼等が滞在するペンションの娘、ラフタリア。クラウスの許嫁を名乗り、結婚式を画策する中、何故かそこにアネットが手を貸し。

 

島に伝わる大海賊の財宝伝説、そして目撃される謎の幽霊船の話。

 

そして島民にとっては不満の種、何か秘密がある海軍基地で巻き起こった呪いが関係していると噂される謎の殺人事件。

 

幾つもの事件が、まるで連鎖するかのように、賑やかな「灯」の面々によって繋がり。事態が縺れこんがらがる中、立ち止まっている暇はないと言わんばかりに駆け抜けて。

 

「一年間―――僕たち『灯』は離散する」

 

その中、クラウスから告げられるのは新たな任務。それはスパイとしての本番。チーム全員ではなく、チームを細分化し、それぞれ別の国で活動に励むと言うもの。今までとは違い、連絡も取れぬ。襲い掛かるのは孤独。それでも、彼女達は決意し「課外授業」へと進んでいく。世界恐慌が始まる前、大切な情報を掴んで見せる為に。

 

「―――革命なの」

 

そして一年後、「ニケ」のお膝元の国、全ての始まりとなった国で。エルナとアネットが動き出す。不可能と言われた革命を巻き起こす為に。

 

いよいよ新たな戦いの始まる今巻、今度はどんな展開が待つのか。シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

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