読書感想:ドラキュラやきん!4

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前巻感想はこちら↓

読書感想:ドラキュラやきん!3 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で巻き起こった騒動の顛末については画面の前の読者の皆様はもうご存じであると思われるが、ご存じであるという読者様はアイリスが自発的に協定をぶち破って行動を起こすまでに、由良の事が気になっていると言っても過言ではないという事をご存じであろう。過去のトラウマから男の人は苦手だけど、それでも由良だけは大丈夫。しかし、彼女にはまだ由良にも、それこそ誰にも明かしていない真実がある。それは、彼女が何故男嫌いとなったのかという話である。

 

 

京都での大騒動から二週間。何故かアイリスが由良を避けるようになり。今までよく絡んできていたけれど、何故か絡んでこなくなった事に違和感を感じる由良。

 

 しかし、そんな事を気にする余裕もなかった。何故か灯里がアイリスの家と誤解している由良の家へと転がり込んできて、しかもアイリスの元で研修を受けるべく従騎士、優璃までもが姿を現したのである。

 

自分の家から追い出され、戻る間もなく。しかし、一先ず目下の目標として、再びの戦いに備えて強くなることを決意し。由良は未晴に依頼し、とある人物を探してもらう。

 

 その人物とは、由良の吸血鬼としての師匠であり世界的なアーティストでもあるザック。しかし、何の因果か。ザックはアイリスにとっても、因縁の相手だったのである。

 

彼女と彼だけが知る、アイリスの母親の死の真実。それを知らず、ザックを狙い動き出す教会の部隊。

 

だが、ザックを守り抜くべき理由がある。灯里の家、家族を繋ぎ止める為にザックの音楽が必要だから。だからこそ、教会にその手を汚させるわけにはいかぬ。

 

 そう、「家族」である。アイリスにとってかつていた家族、灯里の今、正に失われようとしている家族。そして由良の周りの家族のような絆。それが前面に押し出され、アイリスが抱えていたものが由良へと明かされるのが今巻なのである。

 

「この気持ちは、将来あなたと家族になりたいって、そういう気持ちだから」

 

心の傷を越え、アイリスが由良へと求めた家族の絆。そこに込められている思いは如何程か。その思いはあまりにも重く、何処までも真っ直ぐに。只一人だけ、由良の方だけを見ている思いが彼へと晒される。

 

だからこそ、由良ももう、立ち止まっている事は出来ぬ。きっともう、向き合うしかなくなっていくのだろう。

 

家族としての愛、その鮮烈さと温かさの光る今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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