前巻感想はこちら↓
読書感想:三角の距離は限りないゼロ2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で遅ればせながら春珂もまた四季へと告白し、秋玻と四季と春珂、三人のトライアングルが始まったばかりであるが、画面の前の読者の皆様は果たしてここから春珂にどうすれば勝ち目があると思われるであろうか。四季と秋玻の間の絆は、既に始まったばかりであるが割と硬めに結ばれている。ここから春珂はどうすれば割り込めるであろうか。一度二人の関係をリセットしなければ、決して割り込める訳もないし本当の意味で恋が始まる訳もない。
ではそのためにはどうすれば良いのであろうか。二人の内側からはそのようなムーブメントは起こせない、というのは画面の前の読者の皆様も何となくお察しであろう。
では何が必要なのか。それは外部からの刺激。それは今巻、別の高校との合同で行われる文化祭。その相手の高校側の代表として出会った四季のかつての後輩、霧香である。
「でも・・・・・・わたしあきらめないから」
「その気持ちは、絶対にごまかせそうにないの」
夏休みが秋玻と春珂の入院により潰れ、思い出を作ることが出来ず。それどころか春珂が表に出ていられる時間は更に減り、もはや一時間を下回り。どんどんと時間が迫ってくる中、文化祭実行委員となり出会った霧香。
彼女は四季にとっては因縁の相手。何故か。それは彼女は四季が通っていた塾の後輩であると同時に、四季がキャラを作って周りと接する事を始めるきっかけとなった、いわば師匠のような存在。
「だってわたし―――決めましたもん」
彼女は四季の懺悔を受け、それでも無邪気に笑いながら、けれど何処か何かを秘めた様子で。キャラを創れなくなりコミュニケーションがしにくくなった四季と、彼のサポートも出来ず右往左往する春珂を振り回しながら、次々と企画を進めていき。彼女の指揮の元、合同ステージの内容はどんどんと決まっていく。
だがしかし、迎えた文化祭当日。手違いにより合同ステージの場所は誰にも明かされず結果的に観客が誰も集められず。何処か傷ついた様子で霧香はしおらしい様子を見せる。
「それで―――このステージを絶対に成功させます!」
絶対に成功させたい、春珂や秋玻の為にも。その時、四季は柄にもない熱血キャラの仮面を被り、勢いで指揮権を掌握しステージを成功に導くために駆けだしていく。全てが霧香の掌の上であるとも知らずに。
『―――なし崩し的にこのまま最後までは、ダメでしょ』
霧香の指摘に動揺する四季を余所に、彼女は秋玻へも現状を動かす言葉をぶつけ。その言葉を受け、秋玻は一つの決断を下す。きちんと春珂と四季を取り合う為の、決断を。
だがそれは正しい事なのか。今、揺れている四季の手を離し一人にしてしまうのは正しい判断なのか。
何か怖い予感がする次巻、果たしてどうなるのか。