読書感想:スパイ教室07 《氷刃》のモニカ

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前巻感想はこちら↓

読書感想:スパイ教室 短編集02 私を愛したスパイ先生 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、短編集のわちゃわちゃとした賑やかな空気を今も忘れられぬという読者様がおられたら、そろそろ気分を切り替え本編に向き合っていただきたい。本編の空気、それはもはやとんでもない、としか言えぬ。もう言ってもいいだろうか、モニカの裏切りと襲撃により「灯」は半壊の鬱き目に遭ってしまった。既にもはや地獄と言っても過言ではないが、まだまだここからが地獄なのか、それとも好転するのか。それは是非画面の前の読者の皆様の目で見届けていただくとして。そもそもなぜ彼女は裏切ったのか? そこに焦点を当て、秘めた思いを解き明かしていくのが今巻なのである。

 

 

味方が半壊、グレーテも連れ去られ消息不明。動けるメンバーが限られる中、クラウスの指示の元に、連邦内で動き出す「灯」の面々。

 

「この世界を壊していけばいいんだろう? ―――汚れて醜い裏切り者として」

 

 現れては消える彼女の尻尾を追い、追いついた先でモニカとクラウスの激突が発生し。その中で解き明かされる、モニカの思い。何故彼女は裏切ったのか、「翠蝶」は何を刺激したのか、という事の真相。

 

それは何てことはない、しかし彼女にとっても予想外であったもの、その名は「恋」。しかしそれはクラウスへの思いではない、「彼女」への思い。この自由が無き時代においては決して許されぬ思い。

 

だからこそ裏切った、だからこそ世界を敵に回した。まるで世界を巻き込み炎に染めるかのように、全てを炎の中へと叩き落とした。

 

「身の程を知りなさい―――モニカの相棒は私よ」

 

だがそれは、彼女一人で出来た事ではない。モニカという怪物の隣にはもう一人、怪物がいる。影の戦争で世界を支配した二人組の面影に重なるかのように。彼女を支え、その意を完璧に組んで見せる「共犯者」がいる。

 

「ボクの邪魔をするな」

 

 だがしかし、その共犯者ですらもモニカは騙しきり。一人大軍との戦いの中へと飛び込み、その最中、紅蓮の中へと舞台を叩き込み。「翠蝶」と二人きり、決着をつける。

 

その先、モニカが望んだ景色を実現するかのように、「白蜘蛛」と「黒蟷螂」が現れモニカへと終わりを突き付けて。モニカの安否は炎の中に消え、クラウスとティアが拘束され「灯」はその機能を止める。

 

「白蜘蛛は、自分が倒します・・・・・・っ‼」

 

 だが、まだ終わりではない。まだ彼女が、今まで守られるばかりで裏方に徹していた彼女が残っている。彼女の決意は、この戦いを終わらせられるのか。

 

次巻、セカンドシーズン最終巻。選ばれなかった者達は終わらせられるのか。

 

刮目すべし。

 

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