読書感想:駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。2

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前巻感想はこちら↓

読書感想:駅徒歩7分1DK。JD、JK付き。1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で唐突に始まった、陽史と詩織、そして彩乃の三人による家族のような生活。ずっとこんなふうに過ごしていた気がする、そんな事を思わず思ってしまう程にその生活は心に馴染み、三人で過ごす事が自然となっていく、というのは前巻を読まれた読者様であればもうお分かりであろう。しかし、変わらぬ関係はない。そして変わらぬ関係、というものは一度変わったのならばもう変わらない、なんて事は無いのである。

 

 

そして、彼等の関係には一つ、大きな爆弾がある。それはもう、画面の前の読者の皆様もお分かりであろう。そう、彩乃の事である。彼女は言ってしまえば家出人。陽史は正式な保護者でないからこそ、いつかこの関係には終わりを告げなければいけない。

 

 だが、一度芽生えた想いは。一度手に入れてしまった関係の温かさは。そう簡単に捨てきれるものじゃない。芽生えた想いは隠し切れぬ。だからこそ、一つずつ向き合うしかないのだ。

 

相も変わらず何でもない日々を過ごしたり、かつて自主映画製作に陽史が取り組んでいたという過去を二人が知ったり、彩乃が初めてのバイトに挑んだり。少しずつ積み重なっていく初めてと、知っていくバックボーン。知っていくからこそ特別になっていく、離れがたくなっていく。

 

そんな彼等の前に現れた一つの影。その名は千里。陽史の元カノであり彼とは正反対なタイプの人間であり、そして今は新米弁護士として頑張っている女性である。

 

彼女が告げるのは彩乃の立場と今、まさに彼女がここにいる事で起きている問題。唐突に訪れる、別れの時かもしれぬ時。

 

「好きな人に好きになってほしい。それは・・・・・・イケナイことなの?」

 

「待ってくれた、話を聞いてくれた。そんな陽史さんが大好きだから」

 

 だが、嫌だと心が叫ぶ。離れたくないと心が希い叫ぶ。涙と共に溢れ出す彩乃の思いが陽史の心を揺らし、詩織の真っ直ぐな思いが彼の背を押す。

 

だからこそ向き合う、抜け穴だとしても解決策を探す。そんな彼だからこそ好きになる。その思いは止められず、どんどんと跳ね上がっていく。

 

「じゃあ、確認してみる?」

 

「・・・・・・確認してみますか?」

 

ずっと終わらぬ休みなど無く、ずっと続く時間もなく、ずっと変わらぬ想いもない。それでも、この一瞬を、少しだけでも、と。そう願うのはきっと間違いではない筈である。

 

どんどんと思い深まり、恋心が交わっていく今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、やはり独特の温かさが好きという読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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