読書感想:『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで3

 

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読書感想:『ずっと友達でいてね』と言っていた女友達が友達じゃなくなるまで2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、十カ月もの雌伏の時を超え、遂に発売された最終巻であるこの三巻。読者の皆様の中にもご存じの方はおられるであろう。この作品が二巻で打ち切りの危機に在りながらも我々読者の熱い声援により、打ち切りを乗り越えこの巻の刊行まで辿り着いたという事を。それ即ち我々読者が起こした奇跡であり、読者の力も時に何かを覆して見せる、という事を示して見せたという事である。さてそんな歓びの舞を踊りたいのはさておき、前巻で優真の思いの一種の暴発によりゆいと少しぎくしゃくしてしまった訳であるが、一体今巻ではどうなっていくのか。

 

 

「イヤじゃ、ないし・・・・・・」

 

ちょっとぎくしゃくしてしまったのも束の間、ゆいが勇気を出して優真に質問した事で、ただ彼女は恥ずかしがっていただけと言うのが判明し。だが、やはりまだまだ勇気は出せぬもの。逃げの一手を打ってしまい、肝心なところは伝えられず。

 

「―――はい。大切にします」

 

 だがそれでも、確かに伝わっている思いはある。周りの見守る者達にも簡単に理解されるほどに。一度漏れ出た思いはもう止められぬ。そして二人の間は、外堀が自動的に自分から埋めて埋まっていく。

 

風邪を引いてゆいに看病され、ネネに揶揄われ。風邪をうつしてしまったゆいのお見舞いに行って、ゆいの父母に自分の覚悟を示して、許容され。

 

その会話を図らずしも盗み聞きし、両想いだと否が応でも理解して。

 

そう、これでお互いの想いのすり合わせという大切な段階はするりと突破できたのである。ならばあとは、その想いを伝えるだけ。最後の一歩を踏み出すだけ。

 

我慢できないといわんばかりに、勉強会の中で机の下でこっそりと手を繋いだり。時にはゲーマーの血が騒いで、クレーンゲームに真剣に取り組んだりして。

 

そんな中、ゆいの中に芽生えていくのは自分から告白したい、自分から恋を捧げたいと言う思い。それは引っ込み思案だった彼女の感情の発露。本当の意味で一歩踏み出せたと言う無自覚の証。

 

「俺も、好きだ」

 

 お互いの想いは何となく、これ以上ない程に理解している。だけど欲しいのは確かな言葉、確かな証。勇気を出してゆいが踏み込み、優真が受け止め。二人の関係はやっとこさ、あるべき場所に行きつくのである。

 

「・・・・・・ちょっとゆっくり歩こうか」

 

「・・・・・・ん。ゆっくり、行こ」

 

何かが大きく変わる訳じゃない。甘くてもどかしくて、ちょっぴり危なっかしい、そんな日々はこれからも。けれどまるで柔らかな風と一緒に、歩き出していくように。

 

そんな日々はこれからも変わらないのだろう。だからもう大丈夫。安心して幸せへと贈りだせて、手を振って見送れるのだ。

 

王道を丁寧に、熟成に熟成を重ねて。まるで永久機関のように幸せがループし増大していくこの作品。正に心が洗われるような尊さのままに最後まで。画面の前の読者の皆様も是非に見届けてほしい。

 

最後まで貴方も満足できるはずである。

 

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