読書感想:問二、永遠の愛を証明せよ。 思い出補正はないものとする。

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前巻感想はこちら↓

読書感想:問一、永遠の愛を証明せよ。 ヒロイン補正はないものとする。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 無くした記憶、何処へと眠り、何処へと消える。前巻、告白しながらもその記憶を失ってしまった傑と凪沙。だが告白した、という事実を忘れてしまっても、決して消しきれぬ気持ちがあると言うのも確かである。そんな彼等を新たなゲームが待ち受けているのが今巻である。では、今巻では一体何を賭けるのか。前巻のゲームは「記憶」を賭けた、そして今巻のゲームで賭けるのは「思い出」である。二人の関係を形作る大切なもの、それを賭けてゲームを繰り広げるのが今巻である。

 

 

「大丈夫ですよ。私は傑先輩のこと、ちゃーんと待ってるですからね」

 

友達から始め少しずつ距離を詰めてきた悠乃よりも、何か抗えぬ衝動に導かれるかのように凪沙との関係を望み。凪沙と付き合うための理屈を求め、悠乃とどこかぎこちない関係を形成しながら。もがき模索し続ける傑の元へやってきたのは学園祭の季節。元カノである美凪と、彼女の今カレである年下少年、優陽との邂逅と言う一幕を得ながら、凪沙とどこかぎこちなく、それでも手探りで関係を繋ぐ糸を探す彼。

 

 しかし、そんな彼の前に再びクピドが姿を現し新たなゲームの始まりを告げる。新たなゲームの名は「リメンバーラリー」。クピドに奪われた思い出を取り戻す為に対応するスタンプを求める、一見すると簡単なゲーム。

 

だがやはりと言うべきか落とし穴は潜んでいる。ゲームである以上敗者は存在する。それは全部の思い出を取り戻せぬと言う事。だからこそ誰かを切り捨てる必要がある、残酷な事であるが。

 

だが、それが簡単にいくわけがない。参加した傑、凪沙、愛華、悠乃、優陽、美凪の関係はこれでもかと拗れている。諦められればいい、だけど諦めたくない。要らないかもと分かっている、それでも諦められない。

 

スタンプを巡る攻防が始まり、記憶を巡りそれぞれがぶつかり合い。その中でそれぞれの思いが巡り、大切な記憶を巡りぶつかり合う。

 

 想いの奔流に酔うほどに鮮烈で、少しだけ痛ましく。思い出を賭けるゲームが巡る、その中で問われるのは「永遠」。ずっと側に、そんな不確かなものを求める為の命題。

 

忘れてほしい、忘れたくない。拗れもつれぶつかり合い、相互理解は果たせず。だがそんな中、傑は自分の中で唱えられなくなっていた主義を脱ぎ捨て、逃れもせず向き合い答えを探していく。

 

「点と点を、君とずっと繋いでいきたい」

 

 必要なのは簡単な事。信じあう事、伝え合う事。思いを離すことなく、ずっと繋いでいく事。その答えを辿りつき、どこか強欲な答えを選んだ傑を凪沙は再び選び。もう一度、ここからというように二人の関係は幕を開ける。

 

ゲームはいらぬ、そんな事は言えないかもしれない。でもきっと、ここにある思いは変わらぬと信じられる。変わらないものは偽物でも、永遠を願う思いは本物だから。

 

正に彼等は「生きている」、その生の息吹をこれ以上にない程に感じられる。だからこそ今巻は、前巻にも増して面白いのである。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

問二、永遠の愛を証明せよ。 思い出補正はないものとする。 (MF文庫J) | かつび 圭尚, みすみ |本 | 通販 | Amazon