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読書感想:現実でラブコメできないとだれが決めた?5 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で耕平が立ち直り、彩乃と共に駆けだして。いよいよ今巻、最終巻。約611頁の中で描かれるのは何か。それは「ラスボス」であり「メインヒロイン」である芽衣との最終決戦。かつて心折れ、頑ななまでに「普通」に拘る様になってしまった彼女との、最後の戦いである。
だがしかし、ただ打ち負かすだけではいけない。それは何故か。何故ならばラブコメに、ハッピーエンドに悲しむ人は不要。誰もが笑う事こそが本当のハッピーエンド。故に彼女を打ち負かすだけではなく、完膚なきまでに救わなければいけないのである。
立ち直り駆け出して、迎えたのは「白虎祭」と呼ばれる学園祭。正に楽しい事を全て詰め込んだ、お祭り学校の面目躍如のお祭り。その実行に関わることになり、大人達との折衝を始めとし、時に今まで関わった人達の力を借りながら。耕平は彩乃と共に、「真・ラブコメ計画」を発動させるべく、準備を進めていく。
だがしかし、その動きは全て芽衣が察するところであった。あれほど止めたのに、まだ最悪の結末に進もうとする耕平を、今度こそ止めるべく。芽衣は自分を嘗て下した民衆の力、そして噂の力を使い計画を覆そうとする。
・・・だが、芽衣の思惑に反し、その全ては何故か上手くいかない。耕平が不在の場で仕掛けても、その場にいる関係者がまるで耕平の意思を果たさんとばかりに予想を超えて動き。どれだけ本気になって仕掛けても、まるで全員が耕平であると言わんばかりに覆される。かつて自分が辿った光景の焼き直しにどうしてもならぬ。それどころか、その行いは自分の首を絞めていく。周りから誰もいなくなり、自分自身がやりたかったことも分からなくなっていく。失意に沈む彼女の元、舞い降りるのはあの日のようなラブレター。
「全部、私が考えたブラフだから」
だが、約束の場所で明かされるのは「舞台裏」の計画。芽衣が見ようともしなかった彩乃の、耕平の一番の理解者であるから出来た策略。
「だから俺は、現実を丸ごとぶち壊すことにした」
だが、主役は彩乃ではない。勿論主役は耕平だ。芽衣が気付かぬ間に彩乃に踊らされるその裏、進行していた計画が目を覚ます。それは現実を丸ごとラブコメにしてしまう一世一代の計画。誰もを主人公に、ヒロインにしてしまう一世一代の夢の舞台。
その中には、勿論芽衣の居場所もある。今まで「物語」の登場人物のようだった彼女を救うにはどうすればよいのか。その答えは一つ。全てを「物語」にして、彼女に新たな配役を齎してしまえば良い。
だがそれだけでも足りぬ。完膚なきまでのハッピーエンドに必要なのは、芽衣のかつての仲間達。耕平と彩乃に導かれ、ようやくはぐれていた気持ちが繋がる。それこそが彼女へ贈るハッピーエンド。
その裏、皆に訪れる幸福な結末。それは耕平にも。今までずっと側に居た彼女との新たな関係。それが彼へのご褒美である。
正に圧倒的、正に完璧。これにて完結、悔いはなし。
画面の前の読者の皆様も是非、最後まで見届けてほしい次第である。