読書感想:灰原くんの強くて青春ニューゲーム3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:灰原くんの強くて青春ニューゲーム2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、一周目とは違う選択肢を取り続けているが故に、一周目ではあり得ぬ筈の人間関係を築き、気が付けば想い人である陽花里、と近づくよりも早く、何故か詩の心を掴んでしまって。タイムリープしても無敵、ではない。未来を観測するスキルもないし、未来にどんな影響を及ぼすかも考える前に行動してしまう。それは夏希の良さであり、同時に危うい点ともいえる。では、今まで一歩引いた位置にいた陽花里は果たして、動かないのであろうか。

 

 

そう思われた読者の皆様、どうかご安心いただきたい。始まりの一巻、変容の二巻。そこから繋がり将来、そして夢を描いていく今巻。いよいよ陽花里も動き出していく巻なのである。

 

「・・・・・・もう少し、どうにかしてあげたいとは思うのだけれど」

 

学生にとっては憂鬱な期末テスト、そこを超えれば夢の時間である夏休み。解放された彼等は今しかない時間を楽しむように。美織とその友人である芹香も仲間に加え大所帯での泊りがけの旅行を企画する中。陽花里の事を昔から知る唯乃の危惧は的中してしまう。時代錯誤の石頭な陽花里の父親が課した制限により、彼女だけが旅行に不参加となってしまったのである。

 

夏希にとっても一周目の人生である意味因縁のある相手。しかしその言い分は、厳しいけれど間違ってはいないものがあるのも確かであり。どうすればいい、と悩んでもそもそも他人の家の問題に口出しするわけにもいかず。悩む中、唯乃は夏希へ彼女がいる場所を教え。そこへ向かった夏希は、今まで知らなかった彼女の一面に触れていく事となる。

 

「・・・・・・多分ここに、現実的な回答を用意する必要がある」

 

 今まで親の操り人形だった彼女が抱く、小説家になりたいと言う夢。糸が切れた人形には人間になる権利がある、ならば今こそ断ち切るべし。その為に必要な道筋を共に考え、再び反抗心を目覚めさせた陽花里を見守り。彼の見守る前、陽花里は今まで言えなかった本心を炸裂させ、堅物な父親から譲歩を引き出して見せる。

 

陽花里も問題なく参加できるようになった旅行、それは夏希がいたからこそ掴めた、一周目の人生ではつかめなかった確かな結果。

 

「―――いつか、満月の見える夜に」

 

だからこそ、陽花里の中に芽生えた思いは必然であったのだろう。それは彼にとっては何よりも嬉しいもの。だが今は、彼の心に波紋を齎すもの。そう、この時から確かに彼は三角関係の中心地に立たされた。二人の思いは分かっている。自分が優柔不断なのも分かっている。だが、それでも。確かに選ばなければいけない、それも分かっている。

 

故にここからが、ラブコメとしては本格の始まりなのかもしれない。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

灰原くんの強くて青春ニューゲーム 3 (HJ文庫 あ 11-01-03) | 雨宮和希, 吟 |本 | 通販 | Amazon