読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。3

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前巻感想はこちら↓

読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、昨今朱音のような純ツンデレヒロインというのは物凄く珍しい部類に入るのかもしれない。少なくとも私の観測範囲内では彼女くらいしか見た事が無い。それはともかく、前巻まで読まれた読者様であれば彼女のヒロインとしての面倒くささはもうお分かりであろう。そんな皆様、彼女の面倒くささが好きという読者様はどうかご安心していただきたい。今巻もまだまだ面倒くさい、それこそ若干の呆れを含んだ溜息をもらしてしまうかもしれぬ程に。

 

 

何故そこで踏み出せない、何故立ち止まっている。そう言いたくなってしまうかもしれない。正直、まだ堪え性のない頃の私がこの作品の中に登場人物として入ったのならば、何を差し置いてでも台風のように人間関係をかき乱していただろう。そう言ってしまいたくなるほどに、面倒でもどかしいこの二人。

 

だが、それもまた仕方のない事なのかもしれない。何故なら、才人も朱音も等身大の少年であり少女である。何処かの妖怪レベルで察しの良い少年みたく察しが良い訳じゃない。言わなきゃ伝わらない事がある、その一言が而して言えない。二人の関係は契約から始まった、言わばマイナスからのスタートである。だからこそ、マイナスを越えゼロまで来ても、決してプラスになった訳じゃない。

 

「さ、才人と二人きりは・・・・・・危ないんじゃないかしら。絶対、変なことされるし」

 

そんな彼女の目の前、親友である陽鞠はフラれても尚、諦めずにアプローチを続けてくる。一番近くでとびきりの爆弾、それこそ友情をきれいさっぱり灰燼に変えてしまうような爆弾を抱えているとも言えず、だけど二人きりにするのは嫌で邪魔しようとして。

 

『あなたたちの結婚は、形だけのもの。偽物の結婚なのに、どうして才人くんのことを気にするの?』

 

更には糸青の母親、才人の叔母からも悪意の刃を向けられ朱音の心は揺らぐ。偽物だから、本物じゃないから。気にしなくていいはず、なのに気になる。それは何故か。

 

 きっとその答えは、朱音の心の中にもう持っている。ただそれを言語化できていないだけ。そんな彼女へ、才人は惜しみなく大切なものを与え、何だかんだと言いながらと傍にいてくれる。

 

「もう、なくすなよ」

 

「うん。絶対」

 

才人から貰った宝物を無くしてしまった時もまた。彼自身が何処か嫌悪する自身の記憶力であっという間に推理を立て。すぐに宝物を見つけ出してくれたように。

 

 多くのものを、才人から貰っている朱音。だが・・・果たしてそれだけでよいのだろうか? 夫婦とは並び立って同じ道を歩くものなら、今の二人は本当に並び立っているのか? 夫婦とは連星のようなものなら、今の朱音は連星になれているのか?

 

身近に嵐の芽は幾つも存在し、更には遠くから特大の嵐が来る気配がしだす。

 

そんな中、ゆっくりと距離を詰め合いつつある二人は無事でいられるのか。そろそろ朱音も、己の心の年貢の納め時になるのだろうか。

 

一方的に受け取るだけではなく。与え合うような関係に一歩、踏み出せるのか。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。3 (MF文庫J) | 天乃 聖樹, 成海 七海, もすこんぶ, もすこんぶ |本 | 通販 | Amazon