読書感想:神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~

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 さて、人間を判断するものは成績や性格等、様々な要素がある。一面から見るだけではその人の本質は判断できず、多面的に視る事でその人の本質と言う者は初めて判断できるものである。だが、もしたった一つ、唯一無二にして絶対の基準が世の中を支配してしまったのならばどうなるのか。その基準において、無能であると決められてしまったのならば決められた人はどうすれば良いのだろうか。

 

 

とある現実世界。そこでは我々の知る現実世界とは少し違った光景が日常となっていた。

 

 それは、この世界には「異能力」、そして「異能力」以外の攻撃が通用しない「魔物」と呼んで差し支えない異形の化物たちが存在しているという事。既にそんな光景が発生して百と余年。既に異能力は日常に根付き、いつしか「能力数値」と呼ばれる異能力を図った数値こそが絶対の基準となっていたのである。

 

そんな世界で落ちこぼれとして過ごす少年、隼人(表紙左)。両親が海外で仕事をしているため、妹の蒼(表紙右)と実質的な二人暮らし。彼の能力数値は「0」。まごう事無き「無能」を表す数値であり、故に彼は通う高校において蔑まれ、苛めを受ける日々を過ごしていた。

 

 しかし、それは真の姿に非ず。彼の数値は「0」などでは決してない。その本当の数値は、測定器がエラーを吐き出す程に強大。その身に「戦神」と呼ばれる異能を宿す彼は、まごう事無きこの世界の最強の一角なのである。

 

けれど彼は厄介事を愛さず、自分から戦いの中には飛び込もうとせず。日々の苛めも諦観を以てどこ吹く風でやり過ごし、どこか昼行燈のような日々を過ごす、今日もまた。

 

 ではこの作品は、そんな彼の何でもない一周回って穏やかな日々を描く作品なのだろうか? 否、無論答えは否。そんな訳がないだろう。宿業の星の元に生まれたのか、はたまた厄介事の女神に気紛れに愛されたのか。それはまだ分からぬけれど、彼は否応なく戦いの中に巻き込まれ、最強として君臨する者達にその力を知られていく事になるのである。

 

降りかかる火の粉を払っただけと言わんばかりにさっさと終わらせてみれば、その様子を目撃され。そこから始まるのは戦いの日々。人間も魔物も、彼を放っておくわけがないと言わんばかりに次々と襲い来て、異能を使わず乗り切ろうとしても、最後はやはり力を使うしかなくて。

 

(俺は、自分と家族が無事ならそれでいい。それ以外を救う余裕など存在しないんだ)

 

けれど、隼人は心の根底の戦う動機を頑なに変えず。今日もまた、何となく戦いへ。

 

何処か捻くれた主人公が好きな読者様。異能力がぶつかり合うバトルが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

神々の権能を操りし者 ~能力数値『0』で蔑まれている俺だが、実は世界最強の一角~ (ダッシュエックス文庫) | 黒, 桑島 黎音 |本 | 通販 | Amazon