読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。2

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前巻感想はこちら↓

 読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、突然ではあるが、この二巻を読み終えた者として、一つだけお先に叫ばせていただきたい。―――このヒロイン、朱音、とんでもなくヒロインとして面倒くさい、と。

 

だが彼女を責める訳にもいかない。何故なら彼女は、(一応)大嫌いな相手との結婚を強いられた身であり、まだその心の中の感情に名前はなく、方向性も未確定なのだから。 ・・・・・・故にこそ、彼女は本当の意味で、まだスタートラインにすら立てていない。だからこそ、無自覚に恋敵に塩を送ってしまうような行為をしてしまうのだろう。それがどういう結果を生むのかも知らずに。無論、それを責める訳にもいかない。打算と計算で動けるのが大人である。だが彼女も才人もまだ子供。何も考えず、情動のままに動けるのは子供の特権なのだから。

 

「この先は他人のフリ! 結婚してることは絶対ヒミツよ!」

 

少しだけデレたのも束の間、相変わらずの喧々諤々。けれど、打てば響くかのようなやり取りが心地よく。今までのように続く、二人の秘密の新婚生活。

 

「私、ね。その・・・・・・才人くんのこと、好き、なんだ」

 

が、そこに黄色信号を灯すかのような告白をする少女が一人。才人と朱音の級友であり、朱音にとっては親友である陽鞠の恋心の告白である。

 

もうとっくに終わっている、始まる前から負けている。それを知るのは我々読者ばかりなり。ここで止めていれば、いつも通り、だったのかもしれない。けれど朱音は自身の心に芽生えた悔しさを見ないふりをして、彼女に協力することを選んでしまう。

 

その最中、彼女は陽鞠からのお願いを通じて知る事になる。見ているようで見ていなかった、才人の素顔を。彼が一体、どういう人間であるのかを。

 

自身の心に気が付かぬままに協力を重ね、けれど陽鞠と才人が接近するのを見て何故か心がもやもやして。

 

「陽鞠に言うんじゃない。朱音に、朱音のことを、教えちゃっていいの?」

 

糸青にさえも突き付けられる自身の心の矛盾。嬉しい筈なのに苦しい、だけど彼の事は大嫌い。だからこそ、これでいいと決めつけて逃げ出して。

 

「やっぱり・・・・・・ヤだ」

 

 なのに、心は嫌だと叫び出す。考えるだけで苦しいと叫び、縋りつくかのように彼へと向かう。何も感じない筈なのに、なぜこんなにも心を揺らされるのか?

 

「・・・・・・負けないから」

 

そう、それこそが「恋」。ずっと眠っていたけれど、無意識に溢れ出すまでに呼び覚まされた唯一無二の感情。まだ正体は知らないけれど、その想いは確かに芽生えた。

 

そう、漸くにして「恋」は始まった。朱音はスタートラインに立ち、気が付かぬ間に号砲は高らかに鳴らされた。故にこそ、ここからが本番、本当の始まりなのだ。

 

前巻と合わせて一つ、本当の意味で全部が始まる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様、いい意味で面倒くさいヒロインが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。2 (MF文庫J) | 天乃 聖樹, 成海 七海, もすこんぶ, もすこんぶ |本 | 通販 | Amazon