読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。7

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。6 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で朱音が不器用ながらも才人に向かい踏み出せた、という中々もどかしいにも程があるこの作品としては大きな一歩を踏み出したというのは前巻までを読まれている読者様はご存じであろう。少しずつ朱音の角も取れ始め、デレも少しずつ増えてくる。やっとこさ夫婦として、形を求めだしたこの二人。夫婦、即ち「家族」。そこへ辿り着くためにやっと歩き出したのだ。

 

 

だがそこへ辿り着くにはまだ足りぬ。朱音は知らねばならぬ、才人に関する事を。夫婦であれば知らねばならぬ事がある。そこを知っていかなければいけない。そこへの路が始まるのが今巻であり、糸青の思いについても焦点が当てられていくのが今巻なのだ。

 

 今まで妹枠、マスコット枠であった彼女。そんな彼女が本当は才人の事をどう思っているのかというのを語るのが今巻であり。ラブコメにおいての勝利者の形、は一つではないと示していくのが今巻なのだ。

 

「まあ、そうだ。他のヤツに頼んだら、前と同じ条件が揃わない」

 

前巻、朱音に不意に抱きしめられた事で心に湧き上がった未知の感情。それを確かめるべく陽鞠や糸青も巻き込んで検証し朱音にドン引きされたり。才人から朱音を求めてみれば、気恥ずかしくなってしまった朱音が一歩引いてしまったり。才人からも攻めだした事で今までとは別種のもどかしさが発生するも、糸青に触発された朱音が才人にアルバムを作ろうと提案してみたり。夫婦としての思い出を作ろうと、少しずつ努力を始めていく。

 

「よく考えてみて。あなたは自由に生きられるの」

 

「―――才人様と、別れてはいただけませんか?」

 

 ・・・しかし試練の時はすぐに巡ってくる。久方ぶりに尋ねた祖父の家、そこで待っていたのは俗物の極みたる愚か者な才人の両親。そして才人の事をよく知る糸青の母親である麗子と従者である留衣。才人の事をよく知り彼女達なりに愛しているからこその言葉が、朱音へと突き刺さる。

 

そも、才人とは孤独であった。幼少期から才気の塊である姿を見せつけたばかりに親からは疎まれ世間からは排斥され。孤独を抱えた才人に唯一寄り添えたのは糸青のみ。再起を持つからこそ分かり合えるところがある。対し朱音はどうなのか。同じ場所には立てぬ、才能という点で並び立つことは出来ない。

 

「あなたたちに才人を渡すくらいなら、私が幸せにする!」

 

「恋だけが、すべてじゃない。これ以上の幸せがどこにある?」

 

 だけど愛することは出来る、家族になることは出来る。身勝手な欲望を述べる才人の両親に朱音は本気の怒りから来る啖呵を叩きつけ。糸青はそれを見、改めて才人を朱音に託すのである。

 

幾多の演算を重ねても、たどり着けなかった。でも自分だけの立ち位置、自分にとっての勝ちは掴めた。それが糸青の望んだもの。そんな彼女から託され、陽鞠からも託されて。やはり才人の伴侶になれるのは朱音だけなのだ。

 

更に恋が動き出し、才人側にも思いが芽生える今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。7 (MF文庫J) | 天乃 聖樹, 成海 七海, もすこんぶ, もすこんぶ |本 | 通販 | Amazon