読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。6

 

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読書感想:クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。5 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、今巻の表紙をまずは見てみて欲しい。愛すべき我らがすっt・・・もといヒロインである朱音の今までも見たことのない表情は、恋の証である。 五巻も掛けてようやく自分の思いと向き合って、やっとこさ素直に形にして。小さいけれど大きな一歩を踏み出した事で、何かが大幅に変わるのか・・・と言われると、このシリーズを読まれている読者様であればそんな事はない、とお察しであろう。

 

 

 

「なんでもない。朱音は不器用だと思っただけ」

 

「どうせ私は不器用よ・・・・・・」

 

恋心が招くのは、よりツンツンとした態度。意識してしまうからこそ、今までできた事が出来なくなる。更にツンツンと尖がってしまい、よりぽんこつな方向に暴走してしまい、それが才人の心の中に違和感と混乱を招き。何故そうなると、呆れ半分、納得半分の溜息を吐きたくなるような日々が幕を開ける。

 

 言える訳もない、絶対に嫌われている筈。アドバンテージが意味をなさぬ、宣戦布告すら意味をなさぬ程のマイナススタート。だがそんな中でも、頑張って彼をプールに誘い。しかしそこへ糸青や陽鞠、真帆までついてきてしまった事で、中々二人の距離は縮まらない。

 

そんな日々の中、朱音はとある事例と向き合う事を迫られる。それは「家族」、という事例。両親の再婚を切っ掛けに両親とすれ違ってしまい、家出してきた陽鞠を家に泊める事になって。彼女に指摘されるのは、自分が才人の家族の事を何も知らないという事。よく考えてみれば当たり前である。だって私たち読者も何も知らないのだから。才人は祖父の事を語ることはあっても、両親の事は今まで何も語らなかったから。

 

「たいして面白い話じゃない、時間の無駄だ」

 

能天気の仮面の裏に隠されたものは何か、だが聞こうと思っても照れ隠しにツンツンしてしまい、才人が展開した穏やかな拒絶の壁を超えることは出来ず。陽鞠との間にだけ共有されている、困った両親を持つが故の悩みに触れられず、朱音は焦燥感を強めていく。

 

近しい者なら知っているか、と糸青から聞き出したのは何やら闇が深そうな一端。あの無表情な糸青が強い憎悪を仄めかせるような、重そうな事情がそこにあり。けれど「家」を与えられないのなら返してもらう、と糸青に女王の風格で凄まれて。

 

「才人の家は、ここだから」

 

 彼は優しすぎる、陽鞠の家の問題に全力で立ち向かう位に。そして抱えすぎる、自分一人で。言葉にしなければわからない、と。臆病を超えて真っ直ぐに、朱音は少しずつ前進するのである。

 

ここからが第二部だと言うのなら、朱音はここから更に茨の道に進むのだろう。「家族」、「家」、その壁はあまりにも高い。乗り越えられるのだろうか、未熟な二人で。

 

シリーズファンの皆様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

クラスの大嫌いな女子と結婚することになった。6 (MF文庫J) | 天乃 聖樹, 成海 七海, もすこんぶ, もすこんぶ |本 | 通販 | Amazon