読書感想:PAY DAY 2 太陽を継ぐ者

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前巻感想はこちら↓

読書感想:PAY DAY 1 日陰者たちの革命 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻を読了された読者様がこの感想を読んでいると言う前提の元、今巻の感想を語っていきたいわけであるが、その辺りをご容赦願いたい。ではここから本筋に入っていくが、前巻で自分達を「フォールド」と呼ばれる魔物に変えた元凶である「魔女」、アポトーシスへと革命の爆弾を叩きつけ、命がけで青春を取り戻した春樹と小夏達。彼等を待っているのは、輝かしき青春の代名詞である夏休み。

 

 

・・・で、あるならどれほど良かったのであろうか。哀しきかな、忘れてはいけない。彼等は魔女を倒したけれど、フォールドから人間に戻れたわけではない。命のコインに縛られるのは、結局のところ変わっていない。

 

そして、彼等の小さな日常への回帰を覆い隠すかのように、旭日市には闇が立ち込めようとしていた。それは何故か。何故ならば、この街の「太陽」が死んでしまったから。

 

もうお分かりであろう、ブレイズマンの事である。太陽が沈んだのならば、鬼共が跳梁跋扈する闇夜が来るだけ。明けない夜は無いと言うけれど、それでも太陽が無ければ新しい朝も来やしない。

 

そんな夜に便乗し、支配の芽を伸ばそうとするかのように新たな魔女が忍び寄る。その名は樒(表紙左上)。自らもまた、「ハントハンド」と呼ばれるフォールドであり、アポトーシスの娘と名乗り、新たなる魔女へとなろうとする者。

 

だが、新たに芽生えるのは闇の予感だけに非ず。新たな太陽の芽もまた。その名は陽菜。(表紙右下) ブレイズマンの娘であり、父の仇であるフォールドへの復讐心と殲滅心に燃える、未熟なる英雄の器。

 

 そう、まだ何も始まっちゃいなかった。一つの悪意を排除しても、人は変わらないのなら、悪意もまた人を変えて現れるだけ。

 

夏休みを舞台に新たに始まる戦い。時に樒と彼女が生み出したフォールド達との死闘へ向かい、更に時には心のままに無軌道に戦いを挑んでくる陽菜をいなし、制し。

 

『俺はただ普通に生きたいだけだ。明日も明後日も、願わくばその一念先もずっと。・・・・・・こいつらと』

 

 化け物にとっては、ただ生きるだけでも難しい。世界の全てが敵のようなもので、常に戦いに囲まれて。だけどそれでも、必死に生き延びたい理由がある。だからこそ春樹は、小夏達と共にまた戦いへ挑んでいく。その胸に焼き付く、ブレイズマンの雄姿にある意味で背中を押されるように。

 

太陽を継ぐ者、それは誰か。きっとそれは、陽菜だけではないはずだ。

 

新たな戦いが始まり、前巻とはまた違った面白さが見えてくる今巻。

 

前巻を読まれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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