読書感想:異世界と繋がりましたが、向かう目的は戦争です1

 

 さて、往々にして物語の中で描かれる異世界と言う物は、技術体系や生活様式等が現代日本とは全く異なるものである。そして異世界にあって、現実には無いものと言えば、大体の場合「魔法」である。ではもし、魔法と科学が戦ったらどうなるのか。それこそ大体の場合、一方的な蹂躙が行われるに他ならぬのである。

 

 

この作品中の地球の世界は今、未曽有の危機に晒されていた。突如として世界各所で異世界と繋がる「ゲート」が開かれ、そこから異世界人達がこの世界を侵略する為に来訪し。物理法則を超えた魔法の力に人間達は歯が立たず。あっという間に物量差でも逆転され、滅亡の危機に瀕していた。

 

「「だから嫌なんだよ、この仕事」」

 

 だがしかし、人類には唐突に一つの力が齎された。それは「魔術パック」。幾度かの改良により、人類は一人一つの制約の元に科学で構成された魔術、「科学魔術」を手にし。何とか対抗する事に成功していた。そんな戦いの日々が続く世界の中、世界を滅ぼせる程の力を持つ「最上級戦闘員」として戦う星名(表紙左)。エネルギーを操る力を持つ彼は、攻城兵器のミニチュアを巨大化させて戦うリリカ(表紙右)と組み、日々嫌々ながらも戦いを繰り広げていた。

 

求められるのは協調性ではなく殲滅能力のみ、最強が故に無茶を求められる事も多く、得られるのは平穏ではない。だとしても安寧だって何処にもない。まるでそれしか知らぬと言う様に、彼等は日々戦いの中へと突き進む。

 

ある時は南極に出現したゲートと同化した塔の攻略に突撃させられ。またある時は逆に異世界へと潜入し、情報を得るために諜報員を護衛し、陽動として派手に暴れ回り。さらにサハラ砂漠に籠城する人間サイドの裏切り者を成敗に向かわされたかと思えば、利用されていた最強の同僚の願いを果たす為に、少数精鋭による潜入作戦を余儀なくされる。

 

 何処を切り取っても戦い、それしかないと言わんばかりに。続く戦いの日々の中、異世界側に人類側の技術が垣間見えた事から事態はきな臭さを増していく。そしてそれは潜入作戦の中、謎の異世界人の介入とその異世界人を狙い強襲したオートマタを従えた謎の異世界人という事態の中で結実する。

 

「許せるかよ、絶対に。何が何でも殺す」

 

力は奪われ大分危機的、それでも星名は止まらない。それは何故か。何故ならその胸の中には怒りが渦巻いているから。例え仕事だとしても、モノのように扱われても。それは仕方のない事だと理解はしている、だが理不尽に押し付けられるのは我慢ならないから。

 

だからこそ戦う、誰かを思うが故に。

 

異能力同士がぶつかり合う泥臭いド派手なバトルが心を燃やす、熱さに溢れるこの作品。粗削りながらも確かに面白い、私はそう言いたい。

 

心を燃やすバトルを読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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