前巻感想はこちら↓
読書感想:育ちざかりの教え子がやけにエモい2 - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻で齎されたひなたの告白を画面の前の読者の皆様は覚えておいてであろうか。達也の事が大好きであると言うひなたの想い、それは誰にも否定できぬ想いであり絶対に譲れぬ想い。そして、その想いの前には年齢なんて関係ない。だが、大人と子供には取れる選択肢に違いがあると言うのもまた確かな事である。
ではこの巻についての感想を述べていく前に、この巻の大切なキーワードを私なりに一言で纏めんとする。ならばどんな一言が良いであろうか。その一言は「選択」という言葉がぴったりであろう。
そう、「選択」である。達也の大人だからこその選択もあれば、ひなたの子供だからこその選択もあり。大人と子供、老成と若さ。その対比と選択が新たな嵐の幕開けとなるのが今巻なのだ。
《達也くん》
《もう一度わたしと付き合ってください》
《こちらこそよろしくお願いします。明日香先輩、俺と付き合ってください》
明日香とのすれ違いを重ねた上に築いたもどかしい関係。そこに齎される明日香の故郷への帰郷と、お見合い話。その前に告げられた想いと投げかけた答え。思えばこの答えは当然であったのかもしれない。達也の目は今明日香を見ている。そして大人と子供であれば、大人を選んでしまうだろう。それを「逃げ」と呼ぶのならばそうであるのかもしれない。勿論、大人だからこその「柵」だってある。でも、それでも大人は選ぶ。大人だからこその考えと、大人だからこその選択肢で。
だが、そんな事は子供には関係ない。子供の選択肢はいつだって純粋だ。そして子供の成長はいつだってまるで伸びる芽のように。誰しもが予想しない速度で成長していく。
「好きな人がいます」
スカウトを受けて友と挑んだ映画のエキストラ。大人にも負けぬ程の輝きを見せ畏怖を刻み。ひなたは大人に、何故役者になりたいのかと聞かれ凛とした声で毅然と返す。好きな人がいる。並びたい人がいる。だからこそ今、大人になる為に役者になりたいと。
その輝きと心に魅せられるかのように、ひなたの掌の上で転がされていく大人達。先達である女優にまで恐れを刻み、いつか自分を追い抜いていく予感を抱かせ。それでもひなたは達也を追いかける事を選ぶ。何故なら彼が好きだから。
大人はいつだって狡くて、子供はいつだって真っ直ぐで。そんな選択がそれぞれの場所で為される今巻。
画面の前の読者の皆様、どうか覚悟してほしい。
本当の嵐は、きっとここから。
育ちざかりの教え子がやけにエモい (3) (ガガガ文庫 す 6-3) | 鈴木 大輔, DSマイル |本 | 通販 | Amazon