さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし、気付かぬ間に誰かに裏切られているとしたらどうするだろうか。もし知らぬ間に、何かとんでもない大きな陰謀に巻き込まれていたら貴方はどうされるであろうか。
定められた「試煉」を達成することで、超常の力と呼ばれる「魔技」と呼ばれる力が手に入る、とある異世界。
かの異世界のとある国の王都で、かつて罪人を狩る組織に所属しながらも今、世界から排斥されかつての味方を始めとする様々な勢力から狩られようとしている少年がいた。彼の名はティクス。何故彼は狩られそうになっているのか。それは彼の心臓に刻まれてしまった魔技に理由があった。
その魔技の名は「神匣」。刻まれたものに、多大なる力と不死の恩恵を齎し、その心臓を喰えば神に至るとまで言われた禁忌の魔技である。
世界の全てが敵であるはずだった。だがそんな切羽詰まった状態の彼に手を差し伸べる者がいた。彼女の名はオヨチ(表紙)。かつて百年の前、世界で暴虐の限りを尽くした魔女の一人である「道化の魔女」である。
「オレさまが悪の限りを尽くして、ちゃーんとオマエの中にいる神様を消してやるよ」
世界から課された理不尽への復讐の為、オヨチは「神匣」を消す事を望み。世界から狩られぬ為にティクスは「神匣」を消す事を望む。
今ここに締結された魔女と罪人の共犯者関係。だが、その関係は「神匣」を消す方法の一つである特殊な薬の材料を集める為の行動の最後、裏切られる。
「残念だったな、ティクス。仲間ごっこはもうお終いだ」
その背後にいたのは、ティクスの属していた組織の長であり、オヨチの師匠であった「常闇の大魔女」。神の力を手にするのではなく、神を使役する。それこそが大魔女の願いであり、オヨチは道化として踊っていたにすぎず。
だが、大魔女もまた裏切り者。彼女もまたオヨチを裏切った存在であり、「神匣」を創り出してしまった張本人。
「それより前に、裏切られたからですよ。魔導省にね」
そしてティクスもまた、大魔女に裏切られた者。抱いていた純粋な正義を踏みにじられ、望まぬ魔技を刻まれてしまった者。
「手を貸せ」
「仰せのままに、魔女さん」
だからこそ、かの大悪を討つ為に。利害関係も怨恨も越え、オヨチとティクスの二人は相棒同士として大魔女へと立ち向かう。
その結末は是非、皆様の目で見届けてほしい。
ダークファンタジーが好きな読者様、裏切りの連鎖する息もつかせぬ展開が好きという読者様にはお勧めしたい。
きっと貴方も満足できるはずである。
魔女と始める神への逆襲 道化の魔女と裏切られた少年 (ファンタジア文庫) | 水原 みずき, 紅緒 |本 | 通販 | Amazon