読書感想:わたし以外とのラブコメは許さないんだからね (4)

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前巻感想はこちら↓

読書感想:わたし以外とのラブコメは許さないんだからね(3) - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でヨルカの姉であるアリアに齎された試練を乗り越え、見事に絆を深め更に恋人として強くなった、希墨とヨルカ。外からの脅威も、内側からの脅威も跳ね除け、もはや何ともならないと思われるのは当たり前であろう。だってこの作品はアフターストーリーであるのだから。だが、その周りの関係はまだ、諦める事を知らない。結果的に、彼等の周りの関係もそのままに固定されたのだ。

 

 

そして奇しくも季節は夏、そして夏休み。夏というのは恋の季節、そして恋の魔物が騒がしい季節である。故に、まだまだ様々な事が始まっていくのが今巻なのである。

 

「楽しいな、夏休み」

 

『楽しいね、夏休み』

 

夏休み、中々二人の時間が取れない期間であっても二人の思いは変わらない。寧ろ離れているほうが燃える、と言わんばかりに。夜更かしできるのをいい事に寝落ちするまで電話で話したり、時間の隙間を縫って二人きりで会ったりと夏休みだからこその過ごし方を満喫していく希墨とヨルカ。

 

 だが、遊んでばかりもいられない。希墨が朝姫と共に学園祭の実行委員として駆り出されたりと忙しく、更に二人きりではいられないイベントも次々と沸き起こる。

 

アリアの罪滅ぼしとして、紫鶴の別荘へ瀬名会の面々と共に招かれたり、映の我が儘を聞き、皆で夏祭りへ赴いたり。

 

そんな中、瀬名会の中で想いは巡る。一度切れて新たな形へ結ばれた恋心が巡り、未だ折れられず信念へと昇華した恋心もまた。

 

「今さら気にすることないのに」

 

ひなかの本心から出た言葉、そこに込められた思いは如何程か。

 

「長い片想いがようやく終わったんですよ。恋愛はしばらくいいですってば」

 

紗夕が漏らした燃え尽きた恋心の残滓、大きな思いが終わったからこそ燃え尽きた、その退屈げな心が漏らした本音。

 

「好きな人がいるって、それだけで楽しいじゃない」

 

そして、朝姫が漏らした本音。好きになってはいけない、振り向いてもらえる事なんてないと分かっている。けれど諦めきれない、折れられない。未だに燃える心が導く、諦めきれぬ想い。

 

折り合いをつける事は難しい、人間を分け合う事も難しい。好きの気持ちが冷めないから、だからこそ勝ち目のない戦いでも長期戦覚悟で向き合っていく。

 

恋愛に絶対もIFもありえない。だからこそ、まだまだ想いは燃え上がる。そんな幾つもの想いを巡らせながら、青春の恒例のイベント、熱い学園祭の季節が迫ってくる。

 

幸せな両想いと切なく熱い片想い。交わらぬ思いが交差する、だからこそただ甘いだけではなく面白い。そういう面白さが更に上がる今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

わたし以外とのラブコメは許さないんだからね(4) (電撃文庫) | 羽場 楽人, イコモチ |本 | 通販 | Amazon