読書感想:母親がエロラノベ大賞受賞して人生詰んだ せめて息子のラブコメにまざらないでください

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。母親への親孝行の気持ちと感謝の気持ちは忘れぬようにしたいものである。なんせ「孝行のしたい時分に親は無し」という諺だってあるほどだから。それはともかく、ラノベという世界に置いては様々な両親というキャラクターがおられるものであるが、この作品のような母親は、果たして貴方のストライクゾーンに入られるであろうか。

 

普通の冴えない高校生であるも、作家という夢を持ち、しかし何度も落選を重ねてしまっている高校生、春馬。彼は今、人生の一大事に立たされていた。

 

その一大事に関係していたのは、よりにもよって彼の母親である。年齢を誤解されるほどに若々しくも二児の母、だけどぽんこつでそそっかしい手のかかる母親、美礼(表紙)。彼女に唐突に告げられたのは、春馬も目指していた小説大賞の大賞を受賞しデビューを掴んでしまったという事である。

 

それだけであれば自分でやれと突き放せたかもしれぬ。しかし、春馬に心配されるほどに美礼はそそっかしくぽんこつで、しかも彼女が書いた作品は親子の近親相姦もの、更には筆名は「種付けプレス」。トドメに彼女のミスにより、受賞したのは春馬という事にされていたからである。

 

「決して、最近ハルくんが思春期で冷たいからって、これをきっかけにハルくんにまた構ってもらおうだなんてお母さん考えてないわよ!?」

 

「そっちが本音か!?」

 

 ボケとツッコミの丁々発止のやり取りを繰り広げながらも結果的に代行となる事を了承し。そこより春馬が巻き込まれていくものとは何となるのか。それは息もつかせぬ混沌と、創作論に関わる熱さ溢れる勝負である。

 

「誰が空気ヒロインよ!?」

 

春馬にとってのヒロインであり、実質両想いという正にヒロインである凛夏が思わずセルフツッコミをかます程にボケとツッコミ、そして混沌に満ちたぶっ飛んだやり取りが一気に駆け抜け、息もつかせてくれぬ程に。

 

「うちの家族、舐めんなよってさ」

 

だが、その根底には熱さと家族の絆がある。曲者だらけでとんでもなくて、日々疲労困憊になるほどに大変だけど。それでも、家族モノという題材にケチをつけてきた先輩小説家を羨ます程に真っ直ぐで確かな絆がある。そしてその絆が、春馬を進ませる原動力となる。

 

この作品は一見混沌として見えるかもしれぬ。だが、よく心を澄まして覗いてみてほしい。この混沌は一本筋の通った正しき混沌である。だからこそ、味わい深い面白さがあるのがこの作品なのである。

 

何も考えず下ネタと漫才的やり取りで笑いたい読者様、家族の絆というものを見てみたい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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