前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/04/20/235831
俺はまだ気付いていなかったのだ。
彼女も、それに他の生徒たちも。中学二年生には、風邪よりよほど罹りやすい病があることを――。
風邪をひくのは大人にも、子供にもよくある事である筈だ。では、風邪よりもかかりやすくて大人も子供も、万人にとっての病とは一体、どんなものであるか。
その答えは只一つ。その名前を「恋」という。それは思春期の子供達がそれに罹って大人になり、大人が時に悩まされる不治の病だ。
奇しくも季節は夏。画面の前の読者の皆様にとって夏とはどんな季節であろうか。物語にとっての夏は、どんな季節か。それは春に次ぐ何かが始まる季節であり、恋の花が芽生え始める季節である。
そして、達也の生徒たちは思春期真っ盛りである。だからこそ揺れ惑う。初めて知る感情に。それは大人だって同じこと。だけど大人は大概にして一度はその病に罹っているもの。大人にとっての恋の一つの形、それは終わった恋がまた動き出すという事だ。
恋をしている彩夏は初めて人を傷つけて、ひなたとぶつかって和解して心を解きほぐす。
恋を知らぬ菜月は、変わらぬ自分と知らない感情に戸惑い、まだ見ぬ春に心を揺らす。
今恋をしている美優は自分の好きに心惑わせ、一歩踏み出す事を決意する。
自分の気持ちを恋ではないと信じる明日香は、達也との終わった筈の関係に戸惑って言葉に出来ぬ気持ちを持て余す。
そして、それはひなたも同じこと。彼女もまた抱えているのだ、「彼」に対する等身大の感情を。
『子供は大人を好きになっちゃいけないんですか』
その一言は友達の為、そして自分の為。
「あたしと恋人ごっこ、してみない?」
その戯言に隠した思いは冗談か、それとも本心か。
そう、ひなたもまた思春期の女の子。だからこそ誰もが恋に揺れ、自分の想いに惑って。そして向き合い決着をつけ少しずつ大人になっていくのである。
その全ての移り変わり、そして揺れ惑って向き合って大人になる等身大の、子供と大人の狭間の感情。
その全てを総括して言うのであれば、ただ一言。こう言うのだろう。
「エモい」と。
前巻にも増して更にエモく、尊く。そしてまだまだ、ここからが始まりだと言わんばかりにそれぞれの恋の想いは動き出す。
前巻で一歩進み、今巻で本格的に歩き出すこの作品。
だからこそ、画面の前の読者の皆様に願う。
どうか前巻を読まれた読者様も、そうでない読者様も読んでほしいと。
きっと、このラブコメ戦国時代でも何処にも引けを取らぬ、尊くてエモい恋のお話が楽しめる筈である。