前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/04/12/235933
さて、前巻で世界へ反旗を翻し、腐った奴等を打ち倒し理想の世界を創り出す為に世界へ挑戦状を叩きつけた彩紀、そしてかがり。しかしお忘れではないだろうか、画面の前の読者の皆様。この世界、そして神達へ反旗を翻すという事は決して簡単にいく事ではなく、寧ろ障害があって当たり前なのである。
前回、弁財天と寿老人を退け束の間の平穏・・・と思うもその平穏は束の間。作中冒頭、いきなり二人の家が炎に包まれ燃え盛る場面より今巻は幕を開ける。
その事態を巻き起こしたのは七凶神の一体である大黒天。更に彩紀とかがりの元へ朝廷からの使者、湯津香が来訪してきて七凶神討伐の為の協力の依頼を二人へと持ち掛ける。
彼女曰く、今地上では天下が戦乱の様相を呈しており、朝廷の帝以外の彩皇がその争いを煽っていると。
何処へ行っても戦いは終わらないのか、人が相争うのは変わらないのか。
戦いを前に、訪れたのは人間の楽園とも噂される寺院、「盈水院」。
が、しかし。新たな仲間を求めて訪れたその寺院は、寺院と言う名が付くのがおかしい程に変な場所へと変貌を遂げていたのだ。
みだりに命を奪ってはいけない、盗みを働いてはいけない、性的に逸脱してはいけない、嘘をついてはいけない、酒を飲んではいけない。仏教の信徒として守るべき五つの戒律を守らぬならば何が訪れるのか。それ即ち混沌、あるべきはずの秩序が崩壊した世界。
そんな世界を創り出した者、その名は倶舎奈(表紙左)。盈水院の大僧正であり、遥か昔、時の彼方から彩紀の事を想い続けてきた者。
そう、この楽園ですらも彼の為。何度生まれ変わろうと失わなかった愛する彼の為に。
だが、彼はそれを望まなかった。何故か。それは盈水院が閉じた内向きの世界であったから。閉じられた世界での幸福を望んでいる訳ではなかったから。
だからこそぶつかり合うしかない。例え、彼女が本質的な意味で悪でなかったとしても、その対決が哀しいものでも。
再び炸裂する、彩紀とかがり二人がかりでの力は誰も知らぬ力を見せつけ。
「引きこもってばかりじゃつまらないわ。今回のことで私もよくわかったもの。―――だから、一緒に世界をぶっ壊すための準備をしない?」
そして彩紀と同じように彼女もまた手を引かれ、また一つ世界をぶち壊すための力が集う。
輪廻転生とまるで呪いのような愛が絡まり合い、摩訶不思議な世界の中でまた一つ面白さの段階が上がる今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非読んでみてほしい。
きっと満足できるはずである。