前巻感想はこちら↓
https://yuukimasiro.hatenablog.com/entry/2020/06/18/235421
さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。結婚においては寿退社という言葉があると言う事はご存じであろう、何処かで聞いた事もあられるであろう。ではその上で画面の前の読者の皆様、貴方方に問いかけよう。結婚と仕事。どっちが大事だと貴方は思われるか? 結婚するから幸せなのか、それとも仕事を出来るから幸せなのか。似て非なる、まるで一枚のカードの裏表のように一番近くて一番遠い二つの幸せ。本当に大切なのはどちらだろうか?
前巻まで中々にイイ感じで仲を進展させていた、今巻の表紙を飾るヒロインである牡丹とそのお相手である駿河野。が、しかし。二人はすれ違い、別れる事となってしまう。
その理由とは。結婚したら仕事を辞めてほしい駿河野と、仕事を続けたい牡丹。二人のニーズがすれ違ってしまったから。結婚か仕事か。選ぶものが違ってしまったからだ。
「大丈夫ですって」
漫画の連載に影響が出る事を心配する担当さんにも、心配をかけまいと気丈に振る舞って。
「・・・・・・わたし、本当にフラれちゃったんだ」
だけど一人のその時、隠し切れない傷は開いてしまう。否応なく突き付けられる、自分がフラれたという事実が。涙と共に。
いつもならばそんな彼女へも支える手を差し伸べようとするであろう縁太郎。だがしかし、今回に限って言えばその余裕は何処にもなかった。それは何故か。その理由は、彼にも縁談が持ち込まれてしまったからである。
お相手は京の呉服屋の御令嬢、綾羽。条件は縁太郎が婿入りし、仕事を辞める事。
奇しくも同じ状況へと追い込まれた牡丹と縁太郎。そして二人は互いに見つめていく事となる。結婚と仕事、どちらが大事なのか。
言うなれば、何を一番に追い求めるか。今までの幸せを追い求めるか、それとも諦め新たな幸せを求めるか。
永遠に答えは出ないのかもしれない、だけど、それでも。
「仲人をやっている縁太郎のことが、好きなの!」
結衣の未熟で不器用な告白が、縁太郎の胸を叩いて心を揺らし。
「―――その結婚に、どんな意味があるんだ?」
「結婚はゴールじゃない。そこがスタート地点なんだ。そこから幸せな生活ってやつを、始めなきゃならないんだよ」
根本への問いかけが、牡丹の心に届き火を灯す。
そう、ここからが本当の意味での始まりなのだ。牡丹と縁太郎、二人が拳を打ち合わせて共につかず離れず歩いていく、二人三脚の婚活が。
「負けませんわよ」
「譲らないから」
互いに負けじと、彼の心を掴む為にぶつかり出すカレンと結衣。牡丹の中に過る縁太郎との幸せの予感。
「もう、縁太郎くんが、結婚してくれればいいんじゃないかなぁって・・・・・・」
そして、彼等の知らぬ間に新たな陰謀の種が不穏の影を呼び出す中。ここにまだ一人。自らの幸せを見つけたいと願う一人の女性が。
最後の婚活が幕を開ける、そこで何が待つのか。深まる混戦、大人のラブコメの行方とは。
だからこそ私は敢えて言おう。まだまだこの作品の本気は遠く。全てが揃う事よりきっと始まる。だからこそ、この作品はまだまだ、きっとここからであると。