読書感想:王様のプロポーズ4 黄金の神子

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:王様のプロポーズ3 瑠璃の騎士 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、言うまでもないがこの作品の主人公は無色という少年である。ヒロインである彩禍への愛を一途に貫く少年であるが、それだけではない。きちんと男気も備えているし、王道的な熱さも持ち合わせている主人公である。その熱さが意外と彩禍にも影響を与えていた、というのが分かるのが今巻である。

 

 

 

そして今巻の主役となるのは、アンヴィエットである。不良に見えて実は真面目な彼は、彩禍に対し時折何か思う所があるような動作を見せる。その動きに何の意味が、というのも分かるのが今巻なのだ。

 

「大事なのは今ある手札で何を為すかよ」

 

無事に彩禍と無色が融合していると言う秘密を瑠璃も共有し、無色の訓練相手を瑠璃が務めることになり。「零至剣」を上手に使う事で瑠璃にも食い下がる、という成長を無色が見せる中。黒衣も含め三人で、アンヴィエットからお願いされエルルカからのお使いを果たす為、「庭園」の外へと出る事となる。

 

「―――おとうさん―――」

 

しかし、お使いを果たす前。はぐれ魔術師の軍団に追われていた謎の少女、スーリヤ(表紙)が彼等の前に現れ、何故かアンヴィエットの事を父と呼び。無論父親になるような事をした覚えがない彼が混乱と共に否定するも、とりあえず「庭園」で彼女を保護する事となり。スーリヤが何故か彼と同じ苗字であり、父親と呼んで懐きその後をついて回った事で、いつの間にか彼の子供であると言う既成事実が出来ていく。だが、それだけではない。様々な予想外の事態が次々と起きていく。

 

何故か彩禍が無色と急に分離したり、瑠璃が急に素直になったり、更には何故か女子の制服がメイド服になったり。全く以て意味の分からない事態、同時に発生する世界のあちこちの都市の消失。その中で明かされるのは、スーリヤが発したサラ、という名。それはアンヴィエットの妻であった少女の名前。

 

一体何が絡んでいるのか、それはかつて彩禍が滅ぼした滅亡因子の一つ、「運命の輪」。周囲の願いを無作為に叶える、ある意味で一番厄介な代物。その対処に至る前に、アンヴィエットが彩禍に宣戦布告し、同時に彩禍がはぐれ魔術師の協力者、朱殷に攫われると言う二重の問題が発生してしまう。

 

「彩禍さんならきっと、そんなことはしないからです」

 

喫緊に対処すべきはアンヴィエット。自らが対処すると提案した無色は彼へと立ち向かう。生命に必須な電気を自在に操る彼に対処する手段とは。それは無色だからこその手数の多さ。彩禍の模倣をし続け、今も彼女の魔力は彼の中に。故に彼女の力を再現する事が出来た。それどころか第四顕現にまでその手をかけ、勝利の可能性を引き寄せて見せる。

 

「―――ここからは、私の役目だ」

 

「この選択肢をわたしに選ばせたのは、他ならぬ君だというのに」

 

ならば後は、その信頼にこたえて見せるのは彩禍の役目。横から世界を掻っ攫った朱殷に本物としての力を見せつけ。無色から受け取っていた信頼に答える気概を見せ。あの日選べなかった新たな選択肢を引っ張り出すことに成功してみせる。

 

滅亡因子に関わる話ももう少し明かされる中、格好良い面白さが更に高まる今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

王様のプロポーズ4 黄金の神子 (ファンタジア文庫) | 橘 公司, つなこ |本 | 通販 | Amazon