読書感想:王様のプロポーズ2 鴇羽の悪魔

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:王様のプロポーズ 極彩の魔女 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻で始まったこのワクワクが止まらぬこの作品。前巻を読まれて読者様は何か足りない者があると思われた事はあるであろうか。何が足りぬのか。それは「敵」の存在である。確かに前巻の敵、未来の彩禍は凄まじき敵であったが作品全体の敵ではない。その足りぬ要素である、全体を通しての「敵」が現れ舞台を整えてくるのが今巻なのである。

 

 

彩禍としての生活にも何とか慣れ始め、彩禍でもある黒衣から魔術を教わりながら。日々精進に勤める無色。しかしあの日は出来た第二顕現が何故か出来ず、原因を探り模索する日々が続いていた。

 

その日々の裏、彼の知らぬ間に不穏が動き出す。かつて彩禍が殺しきれず封印した「神話級滅亡因子」、ウロボロスの心臓が不気味に胎動を始めていた。

 

「クララこと鴇嶋喰良っす。よろしく」

 

 その表、無色の元に訪れる新たな出会い。その相手は魔術師専門動画サイトの超有名配信者、喰良(表紙)。「庭園」とはまた別の学び舎、「楼閣」の生徒である。

 

何故彼女がここに居るのか。それは「庭園」と「楼閣」の交流戦が近づいているから。そしてその代表として、未来の彩禍を単独討伐した功績により無色も選定されてしまったのだ。

 

「アタシ様と勝負っす!」

 

何故か喰良に気に入られ動画で恋人として紹介され。更には何故か喰良が彩禍に無色を賭けて勝負を挑み。料理対決やアピール対決を繰りひろげ、最後は交流戦で決着をつける事となる無色。

 

 だがしかし、交流戦本番、事態は急転し裏帰りの時を迎える。「庭園」の一部機能を司る人工知能、シルベルがいきなり不穏な笑いを漏らし。それが引き金となったかのように、「楼閣」の生徒達が突如不死の力を身に着け、暴動を引き起こす。

 

突如巻き起こる暴動の最中、学園地下の封印区画へ向かった瑠璃と無色、更にはそこに追いついた黒衣の目の前で。何故かそこにいた喰良は当然と言わんばかりに、ウロボロスの心臓を取り込んで見せる。

 

 もうお分かりであろう。彼女こそが今回の事態の元凶であり、人間と滅亡因子のハイブリッドであるのだ。彼女により死と言う事象を奪われた傀儡たちが襲い掛かり。力不足の無色の目の前、瑠璃と黒衣は傷つき倒れる。

 

託されたのは何か、今打ち倒すべきは何か。それは己の甘さ。大切なものの為なら、己の根底を捻じ曲げる覚悟。

 

「俺は、その一切を踏み躙り、君を倒そう」

 

覚悟を決めたのならばあとはやるだけ。喰良の唇を奪い、魔力を奪い。無色は彩禍へ変わり、全てを終わらせる規格外の一撃で全てを終わらせる。

 

「必要とあらば躊躇うな。最後にわたしのもとに戻ってくればそれでいい」

 

「―――キスは、君が初めてだよ」

 

最後は二人の純愛に帰結する中、更なる世界の広がりが新たな面白さを広げていく今巻。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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