読書感想:可愛いかがわしいお前だけが僕のことをわかってくれる(のだろうか)

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方は明日死ぬとして何か心残りはあるだろうか。心残りがあるのなら、人はいつでも生きていける。そうは思えないだろうか。

 

東大志望の浪人生、巡(表紙右下)。彼の人生は詰みかけていた。何故なら、同窓会で東大生だと嘘をついてしまったから。だからこそ決めた。よし、死んでしまおう。死んで転生して見せようと。そんな彼の元にサタンの末裔にしてメフィストフェレスの娘の悪魔、ドロルフィニス(表紙真ん中)がやってきたことからこの作品は始まるのである。

 

巡の魂と引き換えに、この世のあらゆる快楽を教えてやろうと契約を持ちかけるドロルフィニス。彼女が巡にかけた枷、それは「尊死」するまで死ねないという魔法。

 

今すぐにでも死にたい、だけどこの身にかけられた枷のせいで死ぬことが許されない。

 

ならばと巡が始めたのはこの世の全ての快楽を味わい尽くす活動であり、手始めに手近なヒロインに急接近してみたり。頑張ってまた東大に挑み始めてみたりとまるでまだ生きていきたいというかのようにこの世を楽しむ活動を始めていく。

 

そんな刺激に満ちた日々の中、接近していくドロルフィニスとの距離。心の内を明かされ知っていく彼女の心の根底。

 

巻き込まれて死ねなくなって、そこではじめて気づいた彼女がいてくれたことがどれだけの支えとなっていたか。

 

大切なのはどう死ぬか、ではない。どう生きていくか。こんなくそったれな世界で誰と、どう生きていくかという事であったのだ。

 

この作品はラブコメ、である筈である。しかしそうは言えないかもしれない、それは何故か。その理由は、ラブコメには似つかわしくないのではないかと言える程に哲学的な話も詰め込まれた、言わばカテゴリーエラーに近い作品だからである。

 

「僕と一緒にこの地獄のような世界を生きろ」

 

しかし、確かにラブコメである。死にたい青年と彼を弄ぶ悪魔、どこか遠いようで近い二人がお互いにさらけ出しぶつけ合い、かけがえのない家族になっていくまでを描いた、名状しがたい何かに見えて確かにラブコメなのである。

 

 

何を言っているのかと思われるだろうか、画面の前の貴方は。疑うのであれば是非この作品を読んでみてほしい。とても言葉にしがたい、摩訶不思議なワールドが繰り広げられまるで暴走しているかのようにあらゆる方向へと突っ走っている作品を拝めるはずである。

 

見たことのないラブコメ、こんなのありかというラブコメを読んでみたい読者様は是非読んでみてほしい。きっと恐らく楽しめる筈である。

 

 

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