読書感想:星継ぐ塔と機械の姉妹

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突然ではあるが画面の前の読者の皆様、貴方はサイバーな世界観に憧れはあるだろうか。そして、もしあなたの理想の嫁が手に入るのなら、その嫁が人間ではないとしても構わない人だろうか。

 

若きAI研究者、永合博史。彼が目覚めたのは自分が生きてきた時代から数千年の先、人間が全て滅びた未来の地球。目覚めて彼は困ってしまった。何故なら地球に恋人、あゆみを残してきていたから。帰る方法は分からない、自分は何も持っていない。だけど帰らなくてはいけない、あの地球へと。

 

地球を目指す彼を拾って助けたのは人型ロボットの姉妹。この星でもっとも人間に近い、演算能力に優れたリザ(表紙中央)、彼女の妹でありボディガードであるソイ(表紙右)である。

 

そんな三人の旅はどんなものとなるのか。それはとんでもなく笑いに満ちたドタバタ騒ぎの旅路であった。

 

そもそも博史の服が無く、服は腰ミノが如く巻いた布のみ。ほぼ全裸、もはや見ようによっては変態である。実際姉妹からはその衝撃の出会いも相まって変態と呼ばれながら旅をする。

 

しかも凄い事にリザの性格がとんでもなく人間臭く、口を開けばマシンガンが如くボケを連発しソイに突っ込まれ、更には自分にとある役目を押し付けられたくないから、と逃げる中で禁忌である人間生成に挑んで博史を召喚してしまったり。

 

君等本当、それで良いのかと言わんばかりの人間臭い、ボケとツッコミのド漫才を繰り広げるロボ娘達。

 

しかし、実は彼女達は博史に関係する者だった。秘められていた真実は、眩しい愛に満ちたものであったのだ。

 

この作品はノンストップ・ギャグコメディと銘打っている。しかし、この作品は愛の物語であるのだ確かに。では一体、誰から誰へと対する愛なのか。

 

 

それはあゆみから博史への、時を越えて蘇った愛。そして人とAI、「母親」から「娘」への親子愛である。

 

娘として生を受けた一人のAIが保持し続けていたとあるデータがずっと続いて受け継がれ、生まれた故郷から遠く離れた地で人が滅びていく中でも連綿と受け継がれていたのだ、彼女達の中に。

 

そして、AIの中でまるで遺伝子が生殖の段階で分裂していくように分化していった彼女の記憶。それがこの星で、奇跡的にまた一つとなり結果として彼女は転生し、彼と巡り会えたのだ。

 

彼と彼女はオリジナルではない。だけど、確かにここに生きている命だ。幾つもの小さな奇跡と、未来へと何かを遺そうとする誰かの想いが積み重なり再び巡り会えたのである。二人が遺した新たな命の末裔に。

 

「良かった・・・・・・」

 

「ありがとう・・・・・・」

 

そして、その巡り会いこそがこの滅びかけた世界を再生する鍵であったのである。

 

 

奇跡の如き恋のお話、笑いの中に感想があるお話が読みたい読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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