読書感想:新婚貴族、純愛で最強です

 

 さて、時にバトル系の作品において、勝敗を分かつ決め手となるのは、「愛」の力だったりするのであるが。実際、「愛」の力というのは決して馬鹿に出来るものではないのだろうか。その答えは分からぬし、千差万別であるかもしれない。だが時に強き思いというのは、人に予想を超えた力を齎すと言うのも、当たり前の事実であるのかもしれない。

 

 

さて、ではこの作品において「愛」とはどこまで重要であるのか、というとであるが。超重要と言っても過言ではない、それこそ主人公の強さの源となるほどに。

 

人間が神を信仰する事を許さぬドラゴンという種族により、神を信仰する人間が虐殺され。エイギュイユという名の「美食家」であり「悪食」の竜の元、力を与えられた人間が竜を駆逐し。自分自身を食する為、エイギュイユが人間に転生し千年。この世界には「ホーリーギフト」と呼ばれる、婚姻が続く限りどの夫婦も得られる恩恵が存在していた。そしてこの力の強さこそが、この世界においての最重要なのである。

 

 かの世界のとある王国、その片田舎に領地を持つファゴット家。その長男であるアルフォンス(表紙中央)は、婚約破棄という末代までの恥を味わっていた。だが彼に問題がある訳でもない。あるとすれば、双子の姉に問題があったのである。

 

上の姉であるシルファのギフト、「略奪」。文字通り先天的なものから後天的なもの、更にはギフトまで奪うそのギフトの元、烈拳、剣聖、大賢者という三つの類まれなる武門の家から全てを奪い。下の姉であるベルファのギフト、「死がふたりを別つとも」。伴侶と死別した場合、能力とギフト全てを奪うと言うそれは、伴侶となった病弱な第六王子の死から全てを奪い。貴族社会で文字通り、蛇蝎の如く嫌われる彼女達の悪評が飛び火してしまったという訳である。

 

「わたしと、結婚してくださいますか?」

 

そんな彼の元へと、姉の紹介でやってきた謎の少女、フレーチカ(表紙左)。身分差がある彼女に、しかしアルフォンスは一目ぼれし。大喜びで自分から、結婚を果たす。その彼へと、発現したギフト、それは「愛の力」。文字通り、伴侶を愛する事で全能力が向上するそれは、しかし重複可能、要は重婚可能という別の意味での不名誉なギフトであった。

 

無論、彼にフレーチカ以外を愛する気はさらさらなく。夫婦として当たり前の事を、後回しにしながらも。二人でご飯を作ったり、オレンジを二人で収穫したり。彼等らしい夫婦の時間を積み重ねながら、フレーチカを取り戻すべく襲来する父親、フレデリックと拳を交えたりと。最強の愛の力で彼女を守る為、遠慮なく力を振るっていく。

 

しかし、彼の前で様々な真実が明らかとなっていく。秘密を抱える分だけ強くなる「秘密の花園」というギフトを跳ね除け、彼女の出生の秘密に迫り。だが彼女も知らぬ、その身に秘められた秘密が明らかとなる時。最後の竜が、人間を食らうべく牙を剥く。

 

「愛ッ‼」

 

「愛ッ⁉」

 

―――だが、竜は知らなかった。愛という力の底力を。どんな状況も何するものぞと乗り越えていくほどに、アルフォンスの愛は無限大であったという事を。

 

規格外な強さを、純愛という柱で通していくこの作品。ドタバタしつつも真っ直ぐにラブコメしているからこそ、面白いのだ。

 

ファンタジーとラブコメの相乗効果を見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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