前巻感想はこちら↓
読書感想:新婚貴族、純愛で最強です - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様であればこの作品における強さの指標、ホーリーギフトに関する事は知っておられるだろうが、こうは思われた事はないだろうか。根底に愛がある力であるのなら、もしその愛が反転でもしたらどうなるのだろうか、と。今巻も中々締まらない切っ掛けから、世界の命運を賭けたドタバタを描いていく訳であるが。実はホーリーギフトとは意外と危険なものだったというのが分かるのが今巻なのである。
「普通、弟のハネムーンにまで出しゃばる?」
その前にまずは、アルフォンスとフレーチカのハネムーンである。しかしアルフォンスが予定を立てる前に、何故かシルファとベルファが完璧な予定を立てて来て。普通に考えれば、まぁアレな訳であるがフレーチカも受け入れたことにより半ば以上家族旅行の様相を呈しながら、一行は王国最南端の水晶海岸と呼ばれるリゾート地へ向かう事となる。
しかし貧乏貴族なのは変わらず、まずは路銀を稼ごうとカジノに突っ込んで、意外な才能を見せるものがいたり。稼いだお金で皆へ海へ繰り出したり。そんな中、ベルファという王族以外で唯一ドラゴンブラッドを持っているフリーの未亡人を狙い、各国からナンパ師という名の刺客が派遣され。王国軍中央情報局の特別結婚相談室の室長でありアルフォンスの元婚約者である令嬢、チェキララと「影」の部隊の隊長、サーティーンが秘密裡に始末すると言うドタバタがその裏で繰り広げられる。
暗闘はチェキララ側たちの勝利に終わるも、ここから更に状況がこんがらがっていく事となる。依頼により派遣されたのは、ベイン一族と言う最強の暗殺者一族。その中でも実力者であるジークフリートとオデット夫婦。だがこの一族にあった、異性の標的に負けたら結婚するまで付け回す、という掟が話にややこしさを添えていく。
口下手なジークフリートと、そんな彼に不満を抱くオデット。話し合わぬままに任務に振り回され、それがちょっとした秘密を抱えたフレーチカと、仲直りに奔走するアルフォンスと奇跡的なバッティングをしてしまって、浮気と誤解し愛の冷めたオデットのギフトが反転し、リゾート地は極寒の氷に包まれる。
このままでは世界ごと凍り付く、その前にオデットを殺さねば止められぬ。
「いらないよ、そういうのは」
だが、愛の力は全てを救える筈。救う為なら見返りなどいらぬ。誰かが助けてくれたように、今度は自分達が助ける番。そう言わんばかりに、アルフォンスはジークフリートを進ませるために全てが凍り付く世界へと飛び込み、かつて勇者に憧れたジークフリートに、世界も妻も救うチャンスが託されるのである。
その結果と、口下手だけど愛が重力を持っている彼の告白はどうなるのか。答えは是非皆様の眼で。
前巻を楽しまれた読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。