読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々10

 

読書感想:ひきこまり吸血姫の悶々9 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品もいよいよ十巻という大台に乗る訳であるが、この作品全体を通しての戦いは、まだ中盤戦が終わる所である、らしい。ではこの中盤戦が終わりとなる今巻では、どんな戦いが待ち受けているのか。期待しかない訳である。

 

 

「人間としての尊厳を失いながら余生を送ればいいんです・・・・・・ふふふ」

 

星砦の置き土産により各国の緊張の糸が切れ、ガチめな戦争が繰り広げられる中。スピカ達「逆さ月」の面々と行動を共にするコマリは、「神殺しの塔」に突入する前の準備も兼ね、休息も兼ねてキャンプをしていた。スピカ憎しでサクナが暴走しそうになったりしつつも過ごす平穏な時間。だがその時間は長くは続かず、波乱と同時に一つの再会を運んでくる。

 

世界の平穏を守る、スピカの因縁の相手。「愚者」と名乗る謎の男が軍隊を率い襲撃し。キルティのミスにより、コマリ、スピカ、サクナ、カルラの四人が纏めて休息地から数百キロ先へ転移してしまい。不意を突かれて無力化されたスピカをお荷物に進む先、目的地である神聖レハイシア帝国に到着した所で。第七部隊の嗅覚に導かれた、ネリアやエステル、ヴィルとの合流を果たせたのである。

 

この帝国は、目的地である村の手前。そして奇しくも残る魔核のうち二つを、ヴィル達が回収してくれていて。残る一つはこの国の長、教皇であるクレメソス504世が握っている。無論この国には「愚者」が罠を張っている。だがそれがどうしたと言わんばかりに、スピカがテロリストらしく騒動を巻き起こし。クレメソス504世を誘拐すると言う凶行に打って出る。

 

さて、もうこうなってしまえばあとはお分かりであろう。一度走り出した戦局は止まらず、動き出した状況は止まる事を知らず。当然襲撃してきた「愚者」に無力化され囚われたりしながらも。もう立ち止まれぬと言わんばかりに、目的地めがけて駆け抜けていく。

 

そこに至るまでに、活躍せぬ者はいない。ネリアやヴィル、エステルたちが合流までに溜めていた鬱憤を晴らすかのように暴れ回り。無論、スピカやリンズ達も負けじと駆け抜け。更にはコマリを敬愛する第七部隊の面々も、我ら此処に在りと言わんばかりに戦場を爆炎に包んでいく。

 

そんな中、明かされていくのはスピカが六百年前から抱えた因縁と約束。ただそれだけを心の支えに戦い抜いてきた。その姿は、まるでコマリの鏡写しのように。違うのは、側に居る存在の違い。

 

「コマリ様はあなたを救うと決めたのです。こんなところで死んだら怒りますからね」

 

だが、それでも。もう失いたくないと、コマリはスピカに手を伸ばし。そこに強さと希望を感じとったスピカは、常世という世界の希望をコマリに押し付けて。大切な者を取り戻すべく、一人旅立っていく。

 

最後まで彼女に連れ回されて、振り回されて。その果てに大きな約束の元に世界を押し付けられて。繋がった世界の先、新たな時代が始まっていくのだ。

 

シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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