さて、甘やかしてくれそうなキャラは、と画面の前の読者の皆様である貴方様に問いかけてみればどんな答えが返ってくるのであろうか。私の友人(リアル)に聞いてみれば、今人気のソシャゲのキャラから何人かの名前が出てきそうな気もするが。と、身内ネタはともかく甘やかしラブコメ、というのは最近少しずつ出てきている訳であるが、甘やかしというのは、どこがおもしろいと皆様は思われるであろうか。
その答えは数あれど、前置きからお察しの読者様もおられる通りこの作品は作者様もおっしゃられている通り甘々度高めの同棲ラブコメなのである。そして二人で幸せになっていくラブコメなのである。
特に仲が悪いわけでも良いわけでもない両親が、お互い別の国への海外転勤になる関係で離婚した少年、零。ネガティブな理由から離婚するわけではなく、愛されていた実感もあるので特に気にする事もなく。海外に行くのも何となく嫌という理由で、彼の一人暮らしが始まろうとしていた。
「零、私と一緒に住もう」
と、思いきやその暮らしは早々に終わりを告げる。突然彼のバイト先にやってきて数年振りの再会をする事になった幼馴染でもある姉貴分、愛音(表紙)。暫く会わぬ間に何と巨大グループの社長になっていた彼女に一緒に暮らそうと提案され、あれよあれよと言う間にタワマン最上階での二人暮らしが始まったのである。
彼をこれでもかと甘やかすように、頼まれていないのに様々なものを与えてくれる愛音。そんな彼女を少しでも支えられるように、家事などの自分に出来る事を頑張る零。時に酔っ払って帰ってきた愛音に迫られてどきどきしたり、何気ない普通のデートをしてみたり。不意に始まった同棲生活の中、自分の弱みを見せたりして。周りの友人達に温かく見守られながら、少しずつ二人の距離は近づいていく。
そんな生活の中、愛音の妹である心音とも接する事で、零には愛音が隠している者が見えていく。自分の友人であり母子家庭で頑張る竜鬼に手を差し伸べる彼女の顔に、一瞬だけよぎった別の感情が気になる。それは心音と自分の両親との再会、そこで愛音が冷たい顔をして拒絶の一言を放ったことで彼女の口から明かされる事になる。
「私が頑張れたのは、零のお陰なんだ」
彼女もまた、家族に問題を抱える者。そして零とは違い、愛を与えられなかった者。だが零だけは愛をくれた、彼がいたから家族を知れた。だからこそ彼女は、零の姉であろうと不器用ながらも頑張ろうとしていたのだ。
「これからも家族として、一緒にずっと生きていきたい」
なら、零があげられるものは何だろうか。今は何の力も持たぬ彼に。だけど彼だからこそあげられるものは確かにある。それは家族の愛。新たな約束なのである。
甘やかしの甘々でこそばゆい温かさがあるのを、家族愛の大きさで包んだ面白さのあるこの作品。萌えて心を温めたい読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。
両親が離婚したら、女社長になった幼馴染お姉ちゃんとの同棲が始まりました (ガガガ文庫 ガし 8-1) | shiryu, うなさか |本 | 通販 | Amazon