読書感想:アオハルデビル

 

 さて、青春を扱ったお話と言うのはラノベ界には数多く存在するわけであるが、数多いからこそ、個性と言う物は目立つ必要があると言える、かもしれぬ。ではこの作品はどんな個性があるのか。言ってしまおう、それは既にタイトルとあらすじに書かれている。「魔が差す」、そして「デビル」。そう、つまりはそういう事である。悪魔という非科学的な存在が関わる、怪異×青春であるのがこの作品なのである。

 

 

ごく普通の少年、有葉。ある日、自身の通う学校にスマホを忘れた事に気付き、ソシャゲのログインボーナスの為にも取りに行くために夜の学校に忍び込んだ彼は、校舎の屋上で揺らめく奇妙な光を目にする。気になり向かった先にいたのはモデルを務める美少女、衣緒花(表紙)。何故か炎の中心に立っていた彼女を救おうとするも、消火器を取りに行く間に彼女は消え。しかし翌日、何故か無傷の彼女に呼び出され秘密を漏らさぬように脅迫される。

 

「―――あなたの人生、ぶっ壊します」

 

だが突如として文字通り、まるで燃える様に熱くなる彼女の身体。胸元から入りだした謎のトカゲのような影。それを見、心当たりのあった有葉は保険医である佐伊の元へと彼女を連れていき、チョコを彼女の口にねじ込む事で鎮静化させる事に成功する。

 

 意識を取り戻した彼女へ、有葉の姉の友達である佐伊は告げる。君は悪魔に憑りつかれている、と。常に人間と共にあり、代償と引き換えに力を貸してきた悪魔達。 その事例の中でも稀有な、自然発生的な悪魔憑き。肉体を媒介に、憑りついた者の願いを勝手に叶えるというその事例、解決する為には自分も気付いていないその願いを、叶えるという事。

 

彼女に憑りついたのは七十二柱の五十八番目、アミー。では燃焼という結果にはどんな願いが隠されていると言うのか。そこを知る為に、衣緒花と行動を共にする有葉。本気でモデルという仕事に向き合い、ストーカーに悩まされ。それでも結果を求め、天才中学生モデルであるロザモンドを始めとするライバルと鎬を削る彼女を、本当の意味で知るべく見つめていく。

 

だが、半人前の悪魔祓いのような彼は一つ見落としをしていた。そも炎、というのは何からできているのかという事を。一方だけを見つめるだけでは、決して見えぬもの。鮮烈な朱に目を奪われているだけでは、見えぬ所に衣緒花の願いは潜んでいたのだ。

 

「僕が、見てるから」

 

それに気づかれず、夢の舞台は願いの暴走により紅蓮に包まれる。けれどそれでも、救うと決意したのなら。痛みという罰を受けてでも、彼女の元へ駆けつけ。有葉は真っ直ぐに彼女と向き合い、彼女を救う事に成功する。

 

だが、悪魔は一柱だけではない。まだまだ心の隙間を持つ者は、いくらでもいる。それこそすぐ近くに。

 

怪異という存在が痛みを齎す、正に鮮烈な青春が見られる今作品。何処にもない青春を見てみたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

アオハルデビル (電撃文庫) | 池田 明季哉, ゆーFOU |本 | 通販 | Amazon