読書感想:召喚士が陰キャで何が悪い3

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:召喚士が陰キャで何が悪い2 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、前巻でアッシマーこと沁子と伶奈の間で三角関係ラブコメが本格的に始まったこの作品の主人公、透であるが、ここで一度彼の人間性について振り返ってみよう。身内というか守るべき内側に入った者は、それこそ命を懸けてでも守るけれど、逆に言うとそれ以外の人物にはどこか淡泊であり、そして自分を「悪」というのも厭わない、どこか捻くれた性格。およそ主人公向き、でもないこの性格は一体どこから捻出されたものなのであろうか。

 

 

その答えが明かされるのが今巻であり、彼が女性不信のような態度を取るようになってしまった理由が明かされ、衝撃を受けると共にある意味で納得もあるのが今巻なのである。

 

正式なパーティを組んだ沁子と、そこに転がり込んできた伶奈。気が付けば形成された三人パーティも、気が付けば割とうまく回るようになり。異世界生活の順調さが更に増していく中、伶奈の友人である亜沙美と香菜がリア充グループの男子と衝突し一時離脱をし、透たちが泊り込む宿屋へとやってきて。透は男子が転がり込んできたらそれまで、という考えの元に彼女達を出迎え、気が付けば彼女達も何だかんだとパーティに馴染んでいく。

 

「誰のことだよ、チャラ男って」

 

そんな日々の中、亜沙美と香菜は透の内心を目撃していく。陰キャラに隠れた深淵の中、それでも捨てきれずにいる優しさという魅力に触れ。伶奈がただ、何の根拠もなく惚れている訳ではない、というのを知っていく。

 

その裏、伶奈が知るのは透の過去。酷い苛めと二度の嘘告白により全てを奪われ、何もかもを諦めたかのように悪となった、現実的だからこそどこかドライな彼の根源。

 

その状況へと追いやった元凶であるかつての同級生、龍牙との再会はすぐ訪れる。虎の威を狩るタイプの外道である彼の言葉に、トラウマを抉られ透は動きを止めてしまう。

 

「私は私の強さを、藤間くんからもらったから!」

 

―――だが、今の彼は一人ではない。どうでもいい押し付けられた醜聞にも惑わされず、伶奈は毅然と「愛」に駆られ激情を突き付け、沁子達も共に立ち。そんな彼女達の姿に、ここで立たなきゃ男が廃ると言わんばかりに透も奮起し、気が付けば小さなものだった過去のしがらみを「悪」として蹴散らしていく。

 

 

「そして、俺の胸にいる」

 

過去の脱却が今ここに終わり、少しだけ心を前向きにし。彼の瞳に宿るのは、新たな光。それは主人公の光か、それとも。

 

大切なイベントをこなし、更にステップアップへの準備が整う今巻。シリーズファンの皆様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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