読書感想:召喚士が陰キャで何が悪い2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:召喚士が陰キャで何が悪い1 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて前巻で透はようやく相棒である召喚獣コボルトの「コボたろう」を手に入れた訳であるが。では彼の冒険が劇的に始まり、どんどんと進んでいくのか、と言われるとそういう事にはならない。それは何故だろうか。その理由はこの作品が現代ファンタジーの様相も呈しているからである。身近になった異世界、行き来も簡単。だからこそチート、なんてものはない。あるのは己の実力、ただそれだけのみ。故にそう簡単に強くなれるわけではない。地道にこつこつ頑張るしかない。

 

 

確かにコボたろうが加わった事で採取の速度も増したしある程度の戦闘もこなせるようにはなった。だが透はまだ力不足であり、コボたろうも駆け出しの状態。ちょっとした魔物との戦闘でもすぐ瀕死になるし、透の援護もそこまで役に立たぬことが多い。けれどそれでも、一緒に強くなりたい。前巻の騒動を経て手に入れた相棒を前に、透の中で未知の感情は高まっていく。それは向上心とでも言うべきもの。今まで腐るばかりだった彼では得られぬもの。

 

「捨てるとか捨てないとかそんなのも知らねえ」

 

 だからなのだろうか。彼の心の中、今まで生きて来て初めて心の奥深くの天秤が自分以外の誰かに傾いたのは。アッシマーこと沁子との関係もまた大切なものだと、自分の中で望んだ事で関係の継続を選び。相も変わらず採取の日々だが、縁が出来たリア充グループと日常でも関わる様になり。少しずつ、彼の心のあり方が変わっていく。周りとの付き合い方が変わっていく。だがそれは、リア充グループの絆に罅を入れるものともなってしまう。

 

当然であろう。パーティの中でも高嶺の花である伶奈が透と仲が良いのを見て、よく思えば悪く思う者だっている。そんな者達の強引な誘いに伶奈は巻き込まれそうになってしまう。

 

「お前らにゃ死んでも渡さねえ」

 

 今までならば、見ていなかっただろう。だが今、頼りなくとも天秤は再び彼女へと傾く。伶奈を守ろうと立ち塞がり言った言葉が、再び彼女を救う事となり。確実に誤解と言う爆弾を生む事となる。

 

「だから・・・・・・やり直したい」

 

そして伶奈が選ぶ一つの道。それはもう一度、透への告白をいつかやり直すと言うもの。恋する乙女の強さを見せつけられ、どうも彼女から目が離せなくなる。アッシマーと横並び、自分の中で彼女の立ち位置が分からなくなっていくのである。

 

 

少しずつ何かが始まる中、ラブコメが本格的に始まる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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