前巻感想はこちら↓
読書感想:姫騎士様のヒモ - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻を読まれた読者様はこの作品が異世界ノワールと呼ばれる訳をご存じであろう。登場人物ほぼ全てが何かしらの傷を抱え、歪みを抱え。そんな奴等が集う街、「灰色の隣人」。その片隅で姫騎士であるアルウィンを支え時に導きながら過ごす「ヒモ」、マシュー。彼の悩みは尽きないし、いつかアルウィンは彼の手を離れる時が来る。だとしても、と無償の愛を捧ぐ彼に安息の時は無い。それどころか更に面倒事が加速していくのが今巻なのである。
「やっぱり人生最悪の日になっちまったな」
前巻の騒動の後、「解放」の売人を殺して回る中に感じる、太陽神を信ずる宗教の中でも一際過激な者達の影。更には、アルウィンのパーティに加入した新人でありアルウィンを信奉する少女、ノエルに絡まれ。溜息を吐くマシューの傍ら、アルウィンは進まぬ迷宮攻略に苛立った様子を見せ、自分に何か言い聞かせるような態度を見せる。
試練と言う名の厄介事はもう足りている、その筈だった。だがマシューには更に厄介事が降りかかる。王都から送り込まれた治安維持のための近衛騎士隊、その隊長でありヴァネッサの兄であるヴィンセントに妹殺しの犯人として睨まれてしまったのである。
アルウィンの焦りの原因であるパーティ内の不穏の空気を助言で解決したのも束の間、無論有罪であるけど言うわけにもいかず。結果的に拷問を受ける事になってしまい、アルウィンと引き離される事になってしまう。
何とか秘密を隠し通し、迎えに来てくれたアルウィンの前でも言えぬ秘密を胸に抱え。何とか乗り切るマシューの目の前、ヴィンセントは謎の襲撃者達に襲われ。その後日、ギルドに現れた新たな鑑定士、グロリアからのギルドに持ち込まれた謎の鑑定品、聖骸布と思しき布切れに関する依頼を受ける事となる。
だが、それこそが今巻の面倒事の始まり。聖骸布を狙うは謎の全身鎧、そして大地母神教の異端審問官もまた。二転三転するかのように何処かに消える聖骸布。更には愛の巣に飛び込んでくる謎の怪文書。更には頻発する地震から予想される「スタンピード」の発生。厄介事は積み重なる中、異端審問官からの依頼により全身鎧を追う事となり。だがそこで太陽神教の過激派を調査するヴィンセントの追う事案とも重なり、結果的に彼と協力する事となる。
「言っただろ。今日がお前の命日だって」
複雑に絡まり合う事件の中、戦うべき敵となるのは憎き「伝道師」。だが、悪い事ばかりではない。喉から手が出るほどほしかった人材、「解放」の製作者との出会いもまたあって。
「約束しちまったからなあ」
だが、それでも苦難は終わらない。スタンピードに巻き込まれたアルウィンを救うため向かうのは迷宮の中。果たして光届かぬ地の底で、マシューは如何にして戦うのか。
前巻よりかは溜めの巻になる中、面白さ高まる中でマシューに関する事も少しずつ動き出す今巻。
前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。