読書感想:冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:冴えない僕が君の部屋でシている事をクラスメイトは誰も知らない - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品は主人公とヒロインがセフレ、という関係から始まると言うとんでもない生々しさを持っていると言うのは前巻を読まれた読者様であればもうご存じであろう。では生々しい、そこから転じて等身大、というのはどういう事であろうか。それは主人公である佑希も、ヒロインである柚実も未熟を晒すという事である。だがそれも仕方のない事だ。だって彼等はまだ子供、そう簡単に思いを割り切れたりしたら、それは未熟という事にはならぬからである。

 

 

 

 

「遠山は誤解されたらイヤ?」

 

前巻、麻里花の行動から始まったクラスの問題を、我が身の被害も厭わず解決した事で、結果的に恋心の引金は決定的に引かれてしまった。そして一度引かれたのならば、もう簡単には止まれない。佑希へと思いを寄せる麻里花は、一緒に通学したり、更にはお弁当を作ってきたりと。陰に日向に、アプローチを繰り出してくる。そして可愛い女の子にそこまで迫られて、悪い気がしないのも思春期男子の想いである。

 

「佑希は空気だった私を見つけてくれて、形のある存在にしてくれた」

 

当然、その様子を目の前で見せられて冷静であれる柚実である訳でもなく。更には彼氏の家に泊まり込んでいた姉である伶奈が家に戻ってきた事で、柚実の部屋が使えなくなり。ため込んでいく欲望は、抑えきれなくなっていく。気が付けば、彼女の心の中には彼がいる。愛なんてない筈だった、その筈なのに本物の愛が芽生えていく。その愛が、心を突き動かしていく。

 

だが、対する佑希は自分には柚実を縛る資格はないと、そこに中途半端に一線を引こうとし。お小遣いを稼ぐために始めたバイト先の男の先輩から映画に誘われた柚実の心は、これでもかと荒れていき。

 

それを目撃した、佑希を体育祭実行委員に引き込んだ麻里花の心もまた、かき乱される。付き合っていると思った二人が付き合っていない、その訳も分からぬ事実に混乱が始まる。

 

混乱し、揺れ惑い、何もかもを両立することは出来なくて、取りこぼして。覚悟も決まらぬままに迎える補習、その先に待っている柚実の誕生日。久しぶりの気安い語らいと、伶奈への真実の告白、更には久しぶりの性行為も相まって。ようやく柚実は、抱えていた大きなものを降ろすことに成功する。

 

「これはあなたたち三人で、解決しなければならない問題なの」

 

「だって、そうしないと高井さんとフェアじゃないから」

 

 始まりからして歪んでいて、フェアじゃない。ならばどうすべきか。伶奈が言うように、これは三人で解決しなければならない問題だ。だからこそ、勇気を出して真実を話して。ようやっと本当の意味で横並びの、三角関係ラブコメが始まる。

 

だがこのラブコメは正に薄氷の上の綱渡り。少し崩れれば瓦解の危険があって、だがもう立ち止まれない。歩き出してしまったのならもう後戻りはできないのだ。

 

さらに生々しく、未熟だからこその等身大の面白さがある今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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