前巻感想はこちら↓
読書感想:魔導書学園の禁書少女 少年、禁忌を共に紡ごうか - 読樹庵 (hatenablog.com)
さて、前巻の感想で私はこの作品を角の取れたダークファンタジー、と表現したかもしれないが、そんな感じで今巻も来るのか、と画面の前の読者の皆様は警戒を解かれているかもしれない。だが今一度気を引き締めてほしい。何故ならこの作品、一気に今巻でギアを上げてくるからである。それはもう、恐ろしく救いようのない程に。
では今巻では何を描いていくのか、というとであるが。前巻は舞台を広げつつアンネを通じて、禁書に関するあれこれを描いた訳であり、今巻ではレンの過去が描かれる。彼が追い求める仇とは何処にいるのか。そこを描きつつ、アンネの過去とも交わっていく巻なのである。
「私の望みはひとつだけ。腐敗した学園に鉄槌を」
前巻の騒動から少し時間が空き、レン達が束の間の平和を謳歌している中。既に次の事態への前触れは水面下で起こっていた。凶悪な魔術師達を本に閉じ込め捕えている「図書監獄」。そこに収監されていた罪人たちが謎の人物により解放され、突如として彼等と突き立った三本の柱により、学園は結界内に囚われ占拠される。
巻き起こる残虐、しかし大魔法使いたちは実力主義故に動かず。「小鳩」クラスの担任、アマギスの隠し玉により守られたレン達いつもの五人は、結界を破壊する為に飛び出していく。
だが、結界を司る三本の柱には、それぞれ番人がいて。その番人たちは、倒しても救えない。何故なら、自爆する術式がその身に仕込まれているから。故に向かう先は、その戦いは。悲しみしか待っていない。
一つ目の柱、そこで待っていたのは殺人鬼である魔術師、グレイ。だが彼女は殺しの中に愛を探して、レンの中にそれを見つけた。だがその先、始まる前に彼女は終わってしまった。
二つ目の柱、そこにいるのはディレイの兄であるダーナム。悪名高き生家の闇に傷つけられ、兄弟で向かい合う事も果たせずに。己の魔術をぶつけ合いやっと分かり合った先、本当の意味での和解は果たせずに。誰も巻き込まぬよう、ダーナムは一人で散華する。
「おまえも生きていた。そうだろう?」
そして三つ目の柱。そこで待っているのは、レンの記憶の奥底にいた筈の「彼女」。その傍らにいたのは「アンネ」。そこで明らかになるのは、レンの過去に何があったのか、レンの仇とは何処にいるのか、という事への残酷な真実。そしてアンネとの過去、そこで明かされるのはアンネという存在の役目。
「これが俺の答えだ」
「生き続けたくなっちゃったじゃないか」
多くの犠牲を払っても、未だ真の黒幕は見えず。それどころかこの先の未来は嵐ばかり。だがそれでも彼等は行くと決めた。ならばここからは、更なる大きな戦いへの入り口なのだろう。
更に、より深く、ダークになっていく今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。