読書感想:魔導書学園の禁書少女 少年、禁忌を共に紡ごうか

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さて、「禁書」という言葉を聞いて画面の前の読者の皆様はどんなイメージを抱かれるであろうか。私はハリーポッターと賢者の石で登場した、ハリーが透明マント着用で忍び込んだ図書館の禁書庫のイメージがある。それはともかく、「禁書」という言葉には惹かれるものがあるかもしれない。だが、「禁書」というものは往々にして危険なものなのである。

 

 

ファンタジーを題材とした作品では、そんな描かれ方をする事の多い、「禁書」という存在。その「禁書」を巡る物語が展開されるのがこの作品なのである。

 

全ての魔術師は己の中に本棚に収められた本を持ち、そこに描かれた物語を魔術として行使するとある異世界。当然、本棚に収められている本が多い程に使える魔術の数は多く、それこそがアドバンテージとなるのは明白である。

 

「君、私の伴侶になりたまえよ」

 

 そんな魔術師の卵達が通う学園、通称「無限図書館」に歴代最低得点で入学した少年、レン。彼のボロボロの本棚に収められたただ一冊の本、その中身は空白。しかしそれ故に相手の物語を複写し威力を倍増させて使う事の出来る対人戦に限れば無敵な彼。その力を用い、歴代最高得点で入学した名家の少女、アマリリサに勝ちを譲る形で勝利した所に声をかける影が一つ。級友であった少女、アンネ(表紙)である。

 

「禁書」を集める一族に生まれ、自身もまた禁書を既に何冊か収集している彼女。彼女は己の目的を果たす為、自身には出来ぬ面を担ってくれる存在としてレンに目を付け。彼はその求めに応じ、契約を結ぶことになる。

 

彼女はレンの過去、禁書が関わる事件の唯一の生き残りであるという秘密を知ると語り。禁書を回収するついでに殺すと嘯き、レンはまずは事件の発生の理由を知りたいと語る。

 

その二人の目の前で、魔術師の本棚から本を抜き取って殺害すると言う、最大の禁忌の事件が立て続けに発生する。自身の身も守れぬ魔術師に意味はないと、学園の隠された狂気により事件は日常の中に埋もれ。レンを旦那様と呼び慕うようになったアマリリサの力も借り三人で、事件の解決のために捜査に乗り出していく。

 

 事件の裏、香るのは禁書の香り。黒幕らしき人物を止めても、事件はまた巻き起こる。では犯人は誰か、誰が殺したクック・ロビン。その犯人は意外と身近な場所に。その犯行の理由は、悪意なき狂気。ただ魔術師の本懐を果たしただけ、禁書の圧倒的な力による悦楽に酔っているだけ。その思いは、アンネにとっては理解できぬもの。だからこそ言葉はもう通らぬ、殺し合う以外に道はない。

 

あまりにも強い力を使うが故に手加減が出来ぬアンネの力。なれば手加減の役を担うはレンの務め。

 

「君は、人間だよ」

 

その戦いの先、レンは自分の正体と過去を語り。自分は人間ではないと嘯く彼の手を取り、アンネは真っ直ぐに伝える。君の持つ輝きは、人間しか持ち合わせぬと。

 

角を取ったダークさの中に確かな狂気のあるこの作品。ダークファンタジー入門には良いのかもしれない。

 

ダークな作品が好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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