読書感想:冰剣の魔術師が世界を統べる3 世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する

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前巻感想はこちら↓

読書感想:冰剣の魔術師が世界を統べる2 世界最強の魔術師である少年は、魔術学院に入学する - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、まごう事無き王道ファンタジーであり、熱さ溢れる物語の展開が見所であるこの作品。だが画面の前の読者の皆様、こう思われた事は無いだろうか。この作品、ヒロイン候補が多いけれど、まだ女同士の戦いが起きていないな、と。

 

 

 

そんな事を思われた画面の前の読者の皆様、どうか安心していただきたい。ヒロインレースはまだ始まっていない。何故なら、まだヒロインが揃っていないから。では、アメリアの対抗馬として恋愛の舞台に上がるのは誰か。それはこの巻の表紙を見てお分かりであろう。レイ達の通う魔術学園の生徒会長であり、頼れる先輩でもあるレベッカである。

 

夏が終わり秋となる、その中に待っている文化祭。レイ達は文化祭で「メイド喫茶」を行う事を目論み、考えにノッた者達で謀略を巡らせ、見事に策を通す事に成功する。

 

そんな、徐々ににぎわいだす学園を、別の意味で賑わす一つの噂があった。それはレベッカの突然の婚約話。貴族である以上仕方のない事なのかもしれないが、それにしては事前の動きが全く無く。どこか物憂げな表情をするレベッカと共に、その話はレイの中、気にしない訳にはいかぬ話となっていく。

 

レベッカの婚約者となる魔術師、エヴァン=ベルシュタイン。師匠とも会った事はあるけれど、特に印象もなく、いい意味での貴族の魔術師といった感じの青年。

 

それだけであれば気にする必要もなかったのかもしれない。だが、それだけに非ず。婚約者の影と共に、七大魔術師の一人、「虚構の魔術師」、リーゼロッテの影が垣間見え。更には優生機関の魔の手が知らぬ間に忍び寄る。

 

「レイならきっとできる。それにあなたが魔術剣士競技大会で私を奮い立たせてくれたように、私もあなたにとってそんな存在になりたい」

 

 だが、レイの心にもう迷いはない。皆で作り上げた景色が、その中心にいたアメリアが背を押してくれたから。だからこそ進む、敢えて傷つける事でレベッカの心を救う為に。

 

今巻の戦いの根底にあるのは何か。それはレベッカの家の血筋の根底に根付いた呪い、それを抱えていても尚、レベッカも、妹であるマリア(表紙右)も愛する父親の思い。虚構を守り続けるリーゼロッテの思い。そして、自らの目的のために暗躍し続ける優生機関の思惑。

 

しかし、敵にもならぬ、問題にもならぬ。回復を遂げつつあるレイにとっては。

 

「じゃあ、責任・・・・・・とってくれますか?」

 

彼により救われたレベッカの心、確かに宿る恋心。

 

「・・・・・・苦労しますよ。レイって意外にモテますし」

 

「えぇ。でもそれを受け入れる器が重要なのでは?」

 

 そして、アメリアとレベッカ。同じ少年を想う二人が向かいあう時。ヒロインレースは幕を開けるのである。

 

前巻が作品の物語としての始まりであるなら、今巻はラブコメとしての始まりを描いていく巻である。だからこそ、本格的に始まる甘さが作品に新たな彩を添えてくれるのだ。

 

前巻を楽しまれた読者様、やっぱり王道ファンタジーが好きな読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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