読書感想:TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す6 ~ヘンダーソン氏の福音を~



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読書感想:TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す5 ~ヘンダーソン氏の福音を~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、この作品をここまで読まれてきた読者様であれば、この作品のヒロイン、というのは誰かはお分かりであろう。そう、マルギットである。我らが愛すべき主人公であるエーリヒの幼なじみである。しかし彼女はここ数巻、出演していない。それもまた仕方のない事であろう。なんせこの世界、移動手段も通信手段も発達していないので一度遠距離で離ればなれになると、中々出会えぬし話も出来ぬものだからである。

 

 

だが、そんなエーリヒにもようやく解放される時が来た。エリザの身の振り方にも目途が立ち、アグリッピナの元に持ち込まれる怒涛の厄介事を払いのけ。ようやく丁稚の身分から解放され。故郷に帰れる時が来たのである。エリザやミカ、ツェツィーリアといった帝都で出来た仲間達と別れ。師匠であるアグリッピナから様々な贈り物と共に課題を送られ。そして自分をずっと見守ってくれていた「灰の乙女」とも別れ。降りしきる雨の中、彼は故郷へ向けて一人帰り始める。

 

 だがしかし、画面の前の読者の皆様なら賽子の神と運命の女神に、エーリヒがどれだけ愛されているか分かるだろう。只の里帰り、ともいかず。やっぱりクソなイベントの数々に巻き込まれるのである。

 

旅立って早々、隊商を護衛してみたら気に入られてしつこく勧誘されて。その勧誘から逃げ出してみれば、従者たちに荷物を持ち逃げされた馬肢人の少女、ディードリヒ(表紙)と出会い。自分を売り込もうとしてきた彼女を魔法抜きで容易く蹴散らし、しかしそのあり方に勿体なさを覚え。行き先が途中まで一緒なので同行を決め、彼女をお供に旅路を進んでいく。

 

 だが、その旅路はやはりドタバタ過ぎるものである。これでもかと言わんばかりに単発イベントが襲ってくるのである。

 

小さな家族の隊商と野蛮な冒険者の諍いに首を突っ込んでみれば、逆恨みした冒険者達から襲撃を受け。

 

路銀を稼ぐために、地方都市の闘技大会に出場してみれば、道を踏み外しかけた貴族のボンボンに絡まれ、期せずして道を正してあげる事になり。

 

更には足止めを食らった街、路銀稼ぎに護衛仕事を請け負えば、国でも有名な大貴族の令嬢の駆け落ち騒ぎに巻き込まれ、追手の騎士の舞台相手に大立ち回りを繰り広げる事となり。

 

まさにしっちゃかめっちゃか、大食漢で不器用と言う未熟にも過ぎるディードリヒの面倒を見ながら進む旅路。その旅路の中、先を行くエーリヒという戦士の背中を見つめ、その背を追い。未熟な彼女は成長していく。自分の最初の願いを思い出し、戦士として完成していく。

 

「・・・・・・これで黒星が幾つだったかな?」

 

「あら、お忘れになったフリがお上手ね。覚えているんでしょう?」

 

 そして、その彼女と別れ、ようやくたどり着いた故郷で。懐かしい気配と寒気に迎えられ、三年を経ても変わらぬやり取りと共に。やっと、エーリヒとマルギットは再会を果たすのである。

 

成長に必要な期間を経て、一つの章の終わりと言わんばかりの今巻。果たしてこれから始まる、約束の冒険とはどんなものか。

 

それが早く読みたい次第である。

 

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