読書感想:ママ友と育てるラブコメ

 

 さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。皆様は子供と言う存在はどのくらいの年齢が一番可愛らしいと思われるであろうか。誤解しないでいただきたいが別にロリコン的な意味合いで聞いている訳でもないし、私はロリコンではない。単純に可愛い、愛でるならばどのくらいの年齢が一番か、という事である。

 

 

無論それは各人答えが違われるであろう。例えば子を持つ親世代であられる方は、答えにくいかもしれない。

 

 しかし確かに言える事もある。それは子供は純粋であると言う事。大人のような柵に縛られる事もなく、純粋と未熟ゆえに空気を読む事も出来ず。真っ直ぐに生きていると言う事である。

 

三歳の妹、想夜歌(表紙左)。わんぱくな彼女に日々振り回されながらも、多忙な両親の代わりに日々お世話に励む少年、響汰。彼は重度のシスコンである。どれくらいかと言えば、想夜歌に嫌われたら多分死ぬくらいのシスコンな程度に。

 

「お前、学年一位だけど実はバカだろ」

 

 彼にとっては幼稚園の入園式は正に妹の晴れ舞台。しかし普通に考えて高校生が行ける時間にやる訳もなく。やむを得ずお迎えに出向いた彼は、運命的な出会いを果たす。それは学年一位の秀才な孤高の美少女、澄(表紙中央)とその弟、郁(その左隣)。クラスの誰も知らぬブラコンが過ぎる姿を目撃した事で、二人の関係が始まっていくのである。

 

奇しくも境遇は似た者同士、いわば「ママ友」のようなもの。同じ苦労を知るからこそ、どこか放っておけなくて。クラスの委員長となった澄をフォローする事になり、関係性は秘密ながらも共に過ごす時間が仲良くなり。更には郁と想夜歌が仲良くなるにつれて、共に過ごす時間が多くなり。気が付けば弟妹達のスマホを見に行ったり、台所で並んで料理をしたり、休日にまるでデートのようなことをしたり。子は鎹ならぬ弟妹は鎹と言うかのように、二人は少しずつお互いの事を知っていく。

 

 ブラコンとシスコンだから、可愛さ一等賞は譲れないけれど。それでも響汰は、澄の事を知っていく。自分だけにしか見せぬ年頃の素顔、そして学校で完璧を貫くままに周囲とぶつかり気が付かぬ間に疲弊を積み重ねていく彼女の姿を見ていく。

 

何故彼女は、自分が疲弊してでも完璧でいようとするのか。それは過去に亡くした父親との約束。顔も知らぬ約束に縛られているから、まるで呪いのように。

 

「だからさ、二人と一緒に俺たちも成長していこうぜ」

 

 けれど完璧じゃなくていい。最初から完璧な人間なんていない。完璧な見本になんてなれなくていい。成長へと導く響汰の言葉に澄は一歩踏み出し、勇気を以て周りと関り信頼を結んでいく。

 

その心の中、少しずつ響汰への思いが変わりだす。言葉に出来ぬ未確認の感情が芽生えていくのである。

 

子供の純粋さ、元気の良さが弾けるような味を出す中にラブコメ未満なラブコメのふとした甘さのあるこの作品。一風変わったラブコメが読みたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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