読書感想:純白令嬢の諜報員 改編II.審判の時

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:純白令嬢の諜報員 改編1.侯爵家変革期 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、敬虔な狂信者、もといロザリンド絶対主義なラプターであるが、彼からすれば許せない事は無論、ロザリンドが不幸の中で死ぬ事である。しかし、それは物語においての既定路線である。そして所謂「曇らせ」とでも言うべきか、原作絶対主義、改変許さずというファンも一定数おられるだろう。そんな者とかちあってしまえばどうなるか。答えは無論、殺し合い。つまり今巻で起きている一連の戦いを言ってしまうと「推しの展開が致命的に合わぬオタク同士の戦い」なのである。

 

 

「ロザリンド様と一秒会えないだけで、私にとっては千年の時間にも感じられるので、何十回か文明が滅びる体感時間でした」

 

前巻、侯爵家の暴虐からロザリンドを救い出し、何事も心配はない、筈であった。しかし最近、ラプターの心の中で「黒い靄の化物」が自分達を殺し、新たな「薄幸のロザリンド」の物語を始める、という悪夢が渦巻いていた。嫌な予感を覚えながらも、とりあえずは目前に迫った一カ月もの新年祝賀大祭を乗り切るべく、ラプターはロザリンドや仲間達と共に王都へ乗り込む。

 

 絢爛豪華な祝賀会の中、それでもラプターのやるべきことは変わらない。この後、ロザリンドを襲う問題の裏で糸を引く黒幕、その手下となるスラムのギャング共を一掃するのみ。猟犬の募集をする中で見つけた倫理観の破綻した「最狂の猟犬」、ザビ。彼女に原作にはない組織を作らせ、その名の元にギャング共の一掃に乗り出すラプター。しかし彼には、一つ気がかりなことがあった。

 

それはロザリンドの死の一因となった隣国の王子、カール。彼の容姿が原作とは異なっていたというもの。改変の影響かと気にかけながらも、王都の表も裏も支配せんと駆け抜けていく。

 

だが、状況は甘くは進まなかった。ラプターの仕掛けている策を砕き、準備を無に帰すかのように始まる、作中の重要な人物達の連続殺人事件。まるで狂うシナリオをむりやり修正するかのように、原作での戦争に繋がる事件が幕を開ける。

 

「そんなことはどうでもいい!!」

 

「ロザリンド様が幸福になることが全て!!」

 

 炎の中、向き合う黒幕とラプター。激突の中で交わされるのは原作厨と狂信者、譲れぬ二つの感情。作者も読者も関係ない、そう言わんばかりに傷だらけになりながらもラプターは果敢に黒幕と戦い、徐々に追い詰めていく。

 

ではその先に待っているのは何か。それは今までで一番と言ってもいいくらい、衝撃的な光景。果たしてそれはこの世界に何を齎してしまうのか。

 

前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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