読書感想:恋は暗黒。2

 

前巻感想はこちら↓

読書感想:恋は暗黒。 - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 さて、このラブコメ・・・ラブコメ? 果たしてこの作品はラブコメと呼んで良いのだろうか? 打刻してみたが分からなくなってしまった。しかし確かに暗黒、ではあってももどかしすぎるラブコメ、はあるのかもしれない。違うのは付随する要素が暗黒かつ物騒に過ぎる、という事なのかもしれないが。

 

 

そんな、主人公である暗殺者、想星が日常と仕事を反復横跳びしながらヒロインであるくちなとのラブコメに挑んでいくのが、この作品なのである。それは今巻においても変わらない。やっと本物を見つけた、と言わんばかりに想星はくちなとの距離を詰めようとする。

 

「わりとあきらめが悪いんだよね、あたし」

 

 しかし、日常に慣れきれぬ想星だけであれば、アプローチなんて夢のまた夢であるのは画面の前の読者の皆様もお察しであろう。彼に意外にも助力をしてくれたのは、明日美。前巻で恋人関係を解消したかと思えば、友人関係となった彼女が助力してくれることとなり。けれど、彼等からのアプローチを煩わしいとでも言うかのように、くちなは距離を取ろうとする。

 

それを嘆いてる、暇があればよかった。だがそうも言ってはいられない。何故ならば想星には仕事があるから。強敵殺しという自身の役割、それを「姉」の指示の元に果たさねばならぬ。

 

だがしかし、これもまたご存じであろう。想星の強み、それは単に「死なない」だけ。それ以外は寧ろ平凡かそれ以下に過ぎぬ。故に彼の作戦は死亡前提、物騒で凄惨な顛末しか待っていないという事も。

 

「吸血鬼」とも噂される、生娘を生け贄に捧げる狂った宴を催す「貴婦人」。

 

新興の殺人集団であり、重力を自在に操る異能持ちとしか思えぬ力を持つ、正体不明の男の名を用いる謎の男。

 

三年間で十一人の失踪に関わった、同じく重力を自在に操る異能持ちの、死体を飾る悪趣味な男。

 

幾度となく死にながら、最後は血塗れになりながら。時に姉に反目する気配を見せたりしつつ、姉も想星の独り立ちを示唆しながらも。日々仕事に励み、命を失いながら命を稼いでいく想星。

 

「また、明日―――」

 

彼が得るのは何か。ほんのりと近づいた、くちなとの距離か。否、それだけに非ず。彼が得ていくのは「明日」。命のやり取りをしているからこそ分かる、大切な明日の重みなのである。

 

相も変わらず暗黒な中、もどかしすぎるラブコメのような何かが繰り広げられる今巻。前巻を楽しまれた読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

恋は暗黒。2 (MF文庫J) | 十文字 青, BUNBUN |本 | 通販 | Amazon