読書感想:TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す4 上 ~ヘンダーソン氏の福音を~

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前巻感想はこちら↓

読書感想:TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す3 ~ヘンダーソン氏の福音を~ - 読樹庵 (hatenablog.com)

 

 生まれ育った故郷で賊に襲われ、帝都に向かう途中で妖精に絡まれ、帝都についたかと思えば魔剣が作り出したダンジョンで冒険する事になり。文字に起こしてしまうとよく分かるが、エーリヒのこれまでの人生は如何に波乱万丈である事か。思わず溜息を付きたくなるかもしれぬこの状況、しかもまだ彼は十三歳であり成人すらしていない。なのにこの人生の密度であるという事を考えると、彼は余程賽子の出目が腐っているのか、賽子の女神に悪戯心を持って愛されているのか、のどちらかであろう。

 

 

が、しかし。そろそろエーリヒにも一時だけでも休息が必要であるのではないだろうか。幾ら彼がデータマンチであると言っても、身を壊してしまえば意味はない。

 

 ならば休みを与えてしまおう、というのが今巻の展開であり、珍しくも(比較的)穏やかな日々が綴られ、前巻のクエストの整理と次のミッションへの導入となるのが今巻なのである。

 

「こういうのもなんだけど、諦めって肝心だと思うわ」

 

が、しかし。その休日すらも大変なのはもはや自明の理であろう。前巻で冒険したダンジョンを創り出していた魔剣。人に使われ愛される事を望むかの剣が、何故かエーリヒを新たなる主と見定めてついてきてしまったのである。かくしてエーリヒは、クエストの対価として自分に憑りついてきた魔剣と、ダンジョンで回収した本の所有権を手に入れる。

 

その本の所有権を要求し、師であるアグリッピナから出された三つの謝礼。彼女の解呪の元に覗き見た、封印されていた本のげにおぞましき内容。

 

 あちらもこちらもイベントばかり。そして一時休んだからもういいだろう。そう言わんばかりに、エーリヒへと新たなイベントが課される。

 

「じゃ、行ってくる」

 

「うん、背後は任せてくれ」

 

帝都の街、祭りの喧騒の中で出会った僧衣の少女、ツェツィーリア。謎の騎士達、更にはごろつき達に追われる彼女をミカと共に助けた事で、今度はシティ物の世界へと踏み込み。帝都の地下、更には裏路地の袋小路で彼女を守る為に新たな戦いが幕を開ける。

 

 だが、その戦いの中目撃したのは不可解な現象。間違いなく死んでしまう筈だった彼女の、超常現象が如き再生。そこに秘められている真実とは何か。それはまだ分からないけれど、確かに言える事はある。それは、今回のイベントがとてつもなく面倒そうであるという事。だが、もう戻れない。引き返す事は出来ないのだから。

 

流れ的には溜めの巻でありながら、何でもない日常の一部を描く事で世界観に更なる奥深さを加えていく今巻。

 

さぁ、今度はどんなイベントが始まったのか。このわくわくを、どうか画面の前の読者の皆様も共有してほしい次第である。

 

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