読書感想:チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所

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東京都千代田区。いきなりこの地名だけ聞いて、画面の前の読者の皆様は一体何を連想されるであろうか。もしかしたら、何も連想できるものがないかもしれない。だがしかし、それもまた仕方のない事なのかもしれない。

 

東京都千代田区、それは普通に生きていれば中々に馴染みのない場所である。だがしかし、一部の人にとっては馴染みのある場所。霞が関という場所の名前を聞いた事のある読者様は画面の前に必ずおられるであろう。そう、千代田区最高裁判所等の行政機能が集中する、言わば国家の中心といっても過言ではない地区である。

 

そして裁判所である。裁判、それは普通に生きていれば専門職でもない限り馴染みのない世界。故に、普通に生きていればあまり知らない世界である。

 

では何故、こんな前振りになったのか。それはこの作品のタイトルが全てを示している。

 

この世界で何を為すのか。そう、裁判である。異世界の罪人を裁く裁判である。

 

ごく普通の、どこにでもいる、しいて言えばゲームが好きであり、様々なことをそれなりにこなせる。言わば器用貧乏な少年、アクト(表紙左)。彼とは歳が一回り離れた大人であり、彼を溺愛する、史上最年少で裁判官となった義姉、ツカサ(表紙右)。

 

アクトと交わした約束の為、常に現場に拘るツカサ。彼女を尊敬するアクト。二人はある日、突然異世界のとある王国に召喚される。その国の名は「チヨダク王国」。その名前を聞いて何か引っかかったものがあるという画面の前の読者の皆様、貴方は間違っていない。そう、何を隠そうこの異世界は魔法もスキルもあるテンプレ的な異世界でありながら、様々なゲーム機や家電が魔法一つで模倣されていた、何処にもない、画面の前の読者の皆様も絶対に見た事のないであろう異世界である。

 

かの王国には、勿論日本の裁判制度も、司法制度も導入されていた。だがしかし、司法修習や法曹三者の選択など重要な制度が存在しておらず、言わば穴だらけな制度であったのだ。

 

そんな異世界で、王女であるエクスタシアにお願いされ、公平な裁判を為す為に、ツカサは裁判官として、アクトはその補佐官として。二人揃って異世界裁判へと挑んでいく。

 

二人を待ち受けているのは、異世界だからこその魔法と神器が用いられた、今までの常識の通用しない裁判。二人の前に立ち塞がるのは、スライムを利用した詐欺事件。そして火の魔法を用いる勇者が起こした「殺人事件」。

 

弁護人と検察官、裁判官の想いが絡みあい、様々な論告が飛び交い、言論と議論の刃がぶつかり合う。

 

「もっと、この世界は、良くなると思うから」

 

そんな白熱した裁判の中、アクトは補佐官として姉の裁判以外を補佐するために縦横無尽に駆け回る。この世界を良くしたい、只それだけの良心を胸に。

 

「今から判決を言い渡す」

 

そして彼に支えられ、彼がそばにいてくれるからこそ。絶対公平の視点からツカサは判決の鎚を振り下ろす。自らの罪に縛られた、か弱き勇者の救いとなるように。

 

こんなファンタジー、見た事無い。それは今まで約十年、ライトノベルを読んできた私が保証したい。だからこそ、異世界で現実的な裁判を繰り広げる、虚構とリアルが絡まり合う。正に見た事のない、新時代のファンタジー。この作品はそうであると私は声を大にして言いたい。

 

全てのファンタジーを愛する読者の皆様、どうか是非読んでみてほしい。

 

貴方も見た事のない世界に引き込まれる筈である。

 

チヨダク王国ジャッジメント 姉と俺とで異世界最高裁判所 (MF文庫J) | 紅玉 ふくろう, jonsun |本 | 通販 | Amazon