読書感想:最強守護者と叡智の魔導姫1 死神の力をもつ少年はすべてを葬り去る

 

 さて、この世にはアカシック・レコードなる言葉がありファンタジー系の世界を舞台にしたお話で見た事のある読者様もおられるのではないだろうか。仮面ライダー的に言えば地球の本棚、といった方がいいかもしれないが、それはともかく。例えば全部が知れるとして。画面の前の読者の皆様は、その全ての知識を求められるだろうか。例え全部を知っても、何か役に立つのだろうか、と私は思う次第であるが。

 

 

それはともかく。この作品においては、そんな知識の塊である魔導書が重要なキーアイテムであるのだ。

 

とある異世界において、多くの図書館が有り、知識の宝庫と呼ばれている、天使と悪魔が共存するブリューゲル王国。かの国の王都には、一つだけ来館者が基本的にはいない図書館があった。王城の近くにありながら、ほとんど人通りのない路地裏にあるそここそは、王国最大の叡智、門外不出の禁書を所蔵する禁忌図書館。

 

「不思議だね。なんで起きてるのに寝言を言ってるのかな」

 

その図書館の最高司書官を務める天使、クムラ(表紙手前)、その補佐官を務める同じく天使のヴィル(表紙奥)。普段は飲んだくれ、ヴィルに何度もめげずに結婚を迫るクムラと冷たくあしらうヴィル、という関係性。しかしひとたび仕事になれば話は違う。魔法を発動できる魔法石、魔導羅針盤の中でも七つしかない「神が創りし羅針盤」の一つ、全治の力を持つクムラが禁書を解き明かし。死神の力を持つヴィルがその護衛に当たる。

 

そんなある日、別の国である帝国より奪われた禁書を奪還する任務を解読の引き換えに了承し、ヴィルがあっという間に盗人たちを片付け。首尾よく禁書を入手した矢先にクムラのミスで封印されていた禁書が目覚めてしまったりする中。面倒事は訪れる。

 

それは、帝国より奪われた禁書がどうも二つで一つらしいと言う事、さらには賊の襲撃。襲撃によりクムラは傷つき、ヴィルは怒りに震え。その先に明かされるのは、かの禁書は二つで一つの呪いの書、であるという事。そして呪いの対象はクムラであり、かけようとしている下手人は意外と近くにいると言う事。その犯人を問い詰めれば、本当は傷つけたくないと言う本心を聞き出して。実は本当の意味での黒幕は、意外な所にいたと言うのが判明する。

 

「僕の代わりに―――死んでくれて」

 

真の黒幕の手により死んでしまうクムラ。だが、その死を否定する者がいる。それこそはヴィルだ。彼女が死した時、死を司る彼の力。己の望んだものを全て殺し尽くす、悍ましいまでの力が本当の意味で解放されるのである。

 

日々のやり取りは軽め、しかし根底の設定は重めなこの作品。心に刺さるファンタジーを読んでみたい読者様は是非。きっと貴方も満足できるはずである。

 

最強守護者と叡智の魔導姫 1 死神の力をもつ少年はすべてを葬り去る (オーバーラップ文庫) | 安居院 晃, tef |本 | 通販 | Amazon