読書感想:進路希望調査に『主夫希望』と書いたら、担任のバツイチ子持ち教師に拾われた件

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方は専業主婦という言葉に聞き覚えは、恐らくあるとの仮定の下で話を進めさせていただくが、「専業主夫」という言葉に聞き覚えはあられるであろうか。昨今の女性の社会進出が進み始めている世界で、女ではなく男が家庭を守る。そんな生き方を貴方はどう思われるであろうか。

 

 

とある高校に一人の少年がいた。彼の名前は巽健斗(表紙右)。容姿、成績共に平凡。強いて言うなれば料理と子守りが得意。そんな家庭的でヒーローではなくプリンセスと称されそうな彼は、学生にとって一番大事であろう進路希望調査に何と書いて出したのか。

 

その答えは、この作品の題名を見ればもう一目瞭然であろう。そう、彼は養ってくれる相手がいないにも関わらず、進路希望調査に「主夫」と書いて、回答したのである。

 

では、そんな彼を誰が拾うのか。

 

「そうか・・・・・・ならお前は私の旦那になるといい」

 

その彼の拾い主こそ、彼の高校での担任であるバツイチ、四歳の娘を一人で育てる男勝りの女性な遥香(表紙左)である。

 

唐突に婿になれと告げられ、遥香の家へと招かれ。そこで健斗は遥香の娘である千鶴と出会い。

 

知る事になるのは、遥香の私生活のズボラさ。その中に秘められた影。

 

「にしても・・・・・・温かいご飯は本当に久しぶりだな」

 

そんな事を思わず言ってしまう。そこに隠された秘密。

 

「大丈夫だよ。俺は千鶴ちゃんの前からいなくなったりしないから。だから・・・・・・安心して」

 

早朝、ご飯を作りに訪ねた遥香の家で、寝ぼけた千鶴が思わず漏らした言葉。

 

そこに隠されていたのは、あまりにも重い遥香の過去。自分の醜い独占欲が、最愛であったはずの夫を殺してしまったという背負いきれぬ自罰の重み。

 

「間違っていたことがあるならそれはきっと、神様が書いたシナリオが間違ってるんです!」

 

だが、健斗は。そんな彼女の曝け出された心の傷に触れ、優しく包み込まんとばかりに手を触れる。貴方は悪くない、間違っていないと。

 

「当たり前だ。死ぬまで離さないと約束するさ」

 

「健斗・・・・・・好きだぞ」

 

彼に心を救われた遥香は、今度は健斗が曝け出した心の傷、自分に付き続けた嘘の枷に触れ。まるで共に背負わんとするかのように手を差し出す。自分の前では素直になれ、お前は何も悪くないと。

 

お互いの何もかもをさらけ出し合って、そして全部を分け合って。まるで雪だるまのように、二人で一つになりながら人生と言う道を転がっていく。

 

この様を「夫婦」と言わずして何と呼べばよいのか。この純粋な愛に、例えば年の差のようなケチをつける事が誰に出来ると言うのか。

 

そう、この作品は少年が嫁と娘を得ていちゃいちゃする作品である。同時に、まるで神様のシナリオが引き合わせたかのように、よく似た痛みを抱えた二人が出会い、共に支え合い救い合うかのように夫婦になっていく作品なのである。

 

だからこそ、甘い。恋を飛び越え、愛。だからこそ、普通のラブコメよりもちょっと重くて、だけどその分純粋で甘いラブが展開されているのである。

 

人生的なラブコメが好きな読者様、家族が欲しい読者様にはお勧めしたい。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

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