さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様も「リア充」という言葉はご存じであろう。リア充、という言葉に付きまとうのは陽キャ、というイメージである読者様も多いであろう。・・・しかし、ここで一つ、ふとした疑問を問うてみると致したい。果たして、そのイメージは誰が決めたものなのであろうか。果たして、陽キャだからこそリア充、というのは本当なのであろうか。そもそも、リア充というものの基準は誰が決めたものなのであろうか。
そもそも、「リア充」、つまりはリアルの充実の基準なんて十人十色であろう。つまりはそんなものは些細な問題と言えるのかもしれぬ。しかし、実際の所は陽キャこそがリア充であり、陰キャな者達はクラスのカースト底辺と定義づけられる事が多い。
だがしかし、それはとある高校においては逆転する。その場所とは、「長崎県立出島工業高校」。キャラの濃いオタク達が集うこの高校においては、陽キャこそが少数派なのである。
そしてこの高校においては、誰もが皆、自身の趣味に熱中すると言う熱を持つからこそ仲良くなり。カーストとは無縁の、騒がしい日常が繰り広げられていた。そんな高校で、学業とオタク道を両立させながら邁進するオールマイティオタクの少年、健斗。Vライバーやロボット、ラノベに格ゲーにTCGまで。それぞれ熱中する趣味を持つ仲間達と男女関係なくつるみ、楽しい日常を過ごす彼。
そんな彼の変わらぬ日常に、転校生と言う新たな変化がやってくる。その名は理恵(表紙)。何故かお嬢様学校から転校してきた、勿論工業系知識ともオタク趣味とも無縁な生粋のお嬢様である。
何となく気にかけながらも、中途半端な時期の天候が原因による補習漬けな彼女に構う余裕もなく。しかし中間テストで中々に壊滅的な点数を叩きだし、留年の危機にある彼女を助けてほしいと担任に依頼され。
無論、お人好しな健斗はそれを聞き逃す訳もなく。仲間達と共に彼女に接近し、彼女の助けになろうと自分達の日常へと巻き込んでいく。
それは、化学変化か、未知との遭遇か。けれど確かなのは一つ、それは理恵にとっても、健斗にとってもこの受容は幸運であったと言う事。
理恵にとっては初めて知る、未知の世界。様々な世界を体験し、純粋な心のままに様々な事を経験する内に見出していく自分の居場所。
健斗にとっては、今までのノリが通用しない未知の相手。しかし彼女の秘密を知り、彼女が抱える苦悩を知り。自分達に馴染んでいく彼女を見て、次第に彼女もまた、自身の日常へと変わっていく。
「お前たちは、オタクを誤解している」
だからこそ、変わろうとしている最中でもがく彼女を侮辱する奴等は許せない。二人だけのお出かけ中に遭遇した彼女のかつての級友へ、健斗は毅然と突き付ける。「オタク」という、己の熱に忠実な者達がどれだけ輝いているのかという事を。
正に癖が強く、アクも強い。けれど群像的な描写の中に、確かな熱があるこの作品。
故にこの作品、真っ直ぐに面白い。
癖の強い登場人物が好きな読者様は是非。
きっと貴方も満足できるはずである。