読書感想:聞いてくれますよね?先輩

 

 ほろ酔い状態でトラウマ級のホラーをキメてはいけない(戒め)。いきなり何を言っているのかと思われた読者の皆様、お許しいただきたい。今現在、ほろ酔い状態で過去のほん怖のトラウマ回を特集した動画を見て気分が悪くなっているので。という訳で口直しにこの作品の感想を書いていく次第であるが、例えば幽霊のような理解の及ばぬ力は怖いものがある。そのようにこの作品も、理解の及ばぬ力が関わってくる。しかしそれは負の力ではなく、陽の方の力なのである。

 

 

マイナーな種類のトカゲを飼っていること以外はごく普通、強いて言うなら推薦で大学を決めているので現在、一人暮らしの予行演習中。そんな青年、健斗の元にやってきたのは学校でも有名な美少女である後輩の葵(表紙)。彼女の手には、彼も予想だにしなかったものが握られていた。

 

「あのですね、恩返しがしたいんです」

 

 それは幼い頃の健斗が書いた、「何でも言うこと聞く券」。子供の純粋な思いで創っただけのそれは、何故か絶対遵守のギアスのようにお願いを強制するものへと変貌していた。更にそこに、願った後は願いを叶えた側に所有権が移行するという、妙な効果が付随していたのである。

 

そんな券を片手に葵が言うのは、恩返しがしたいと言うもの。かつて幼い頃の健斗に助けられ、彼の言葉を切っ掛けに歌手になると言う夢を叶えた彼女。拒もうにも券をちらつかされぐいぐいと押し込まれ。いきなり家に上げる事になったかと思えば、シャワーを貸すことになったり。かと思えばデートに連れ出されたり、学校で一緒にお昼を食べる事になったり。どんどんと、ぐいぐいと距離を詰めてくる彼女に振り回され。時に妹のように可愛がりながら、二人の時間がどんどんと積み上がっていく。

 

そんな二人を見て心を揺らす影が一つ。それは、健斗の疎遠となってしまった幼馴染である奈津菜。過去にお願い券を使ってとあるお願いを叶えてしまった事で、疎遠となってしまった彼女。そんな彼女と葵は、仲直りする事を望み。お願い券を使ってまで背を押され、ぎこちなくも向き合って。

 

仲直りしてぎこちなく始まる三人での時間。そんな中で疑念として浮かぶのは、そもそも何故実際の効力が付与されたのかという願い。奈津菜の実家である神社を訪ねる中、葵は自分の叶えた夢は、その力のお陰ではないかと思い悩んでしまう。

 

「ちゃんと葵の力だから」

 

その悩みを解消する為、思いの答えを見つけるために。健斗は願った者達の元を訪ねて回り、その努力の跡を見つけ出し。努力こそが実を結んだのだという事実を、葵へと教えてあげるのである。

 

ちょっと不思議な力が彩る、グイグイ来る可愛い後輩に迫られるラブコメであるこの作品。可愛い後輩に振り回されたい読者様は是非。

 

きっと貴方も満足できるはずである。

 

聞いてくれますよね? 先輩 (ダッシュエックス文庫) | すかいふぁーむ, ぺんたごん |本 | 通販 | Amazon