読書感想:魔女と猟犬

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さて、突然ではあるが画面の前の読者の皆様。貴方はもし自分が住んでいる国が滅びの危機に晒されているとしたらどうされるであろうか。もし抗う力があるのなら、必死に最後まで抗うであろうか。それともただ何もせずに、座して死を待つ道を選ばれるであろうか。

 

とある、中世ヨーロッパを下地とした異世界。強力無比な魔術師を多数擁する大国、アメリア。かの国は今、世界各地へとその侵略の魔の手を広げていた。

 

その戦火へと迫られ、少しずつ追い込まれ始めている小さな国があった。その国の名はキャンパスフェロー。かの国の領主であるバドは策を巡らせ、名案を思いつく。魔術師という毒に対するのならばこちらも毒を用いようと。

 

そう、彼が思いついたのは世界各地それぞれで凶悪な伝説を残す「魔女」達を味方に引き入れ対抗せんとする秘策であった。おりしも隣国である騎士の国レーヴェにて一人の魔女が囚われていた。彼女の名は「鏡の魔女」(表紙)。王妃の座に着かんとして囚われた魔女である。

 

魔女の身柄をもらい受ける為、急ぎ隣国へと騎士達を引き連れ旅立つバト。その騎士団の中に一人、暗殺者の少年がいた。彼の名はロロ。「黒犬」と呼ばれる、様々な暗殺技術を叩き込まれた暗殺者である。

 

そんな愉快な者達が集うこの作品では一体何が巻き起こるのか。その答えを簡単に言うのであれば、圧倒的に過ぎるファンタジーであり、圧倒的が過ぎるダークさ溢れる物語という事だ。

 

レーヴェとキャンパスフェロー、二つの国の間で巻き起こる陰謀、国同士の思惑が絡み合い、丁々発止の騙し合いを繰り広げ。そんな中へと何も知らず操られるがままに飛び込んでしまったバド達に待っているのは全滅の悲劇。彼等の命は所詮は国の捨て駒に過ぎず、簡単に命が炎の中に散っていく。

 

狂気に呑まれるか、それとも愛に生きるか。はたまた誰かへの忠義を貫くのか。

 

だが、この作品の中で生きている誰もが文字通り「生きている」。その息遣いすら感じられる程に生々しく、それぞれの心の中に抱えた感情を時に伏せ時に晒しながら全力で生き抜いているのである。

 

「オムラは私が殺すから」

 

「・・・・・・承知しました」

 

そして戦いの中。愛に気付けなかった魔女と殺せぬ優しさを持つ少年、ロロは出会い。約束を交わし、共に戦いの中へと飛び込んでいく。

 

圧倒的なまでに重厚、そして濃厚。そんなダークさと生々しい生の輝きに満ちたこの作品。

 

衝撃を受ける読書体験をしたい読者様、ダークなファンタジーが好きな読者様は是非。きっと満足できるはずである。

 

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